脳みそうだんしつ
「頭がわるいのですが、どうしたらいいですあか?」
一体「頭の悪い人」というのは世の中に存在するのだろうか。こんな漠然とした問いかけじたい無意味なのだが、少なくとも俺は本当に「頭の悪い人」を見たことがないのだ。ノビノビタ氏のように普段からみんなに馬鹿にされているが、あやとりやピストルの腕前はプロなみという人もいる。彼は「頭の悪そうな人」ではあるが、決して頭が悪いわけではない。知能が高くても社会的に活躍できない人は腐るほどいるし、こんなに頭の回転の速くて立派な人がなんでこんなところに、と思うことはよくある。それに、頭のいい人は常に頭がいいわけではない。というよりも、特定の場面でもっとも適した発想や行動のとれる人がいるのであって、その人がその場限りでもっとも頭がいいということになる。その頻度によってあの人は頭がいいとか悪いとか言うこともできるが、総じてどうでもいいことのように思える。ある仕事のプロフェッショナルは別の分野ではまったく役立たずである。あたりまえの話だ。精神や知能の発達において未熟な人や思考回路が歪んでいる人は頭が悪いとは別問題である。ような気がする。要するに「頭の悪さ」の指標となる基準がどこにもないわけで、まあ考えるだけ無駄ということになる。そういうわけで、純粋の馬鹿には滅多にお目にかかれない。
しかし、俺は間違いなく頭の悪いやつを知っている。この俺だ。
神様、白状します。僕は頭が悪いのです。四六時中頭のなかにもやがかかった状態です。思考がまったく整理できません。不幸にも俺はいわゆるいい大学を出ているが、蓋を開けてみると知識もないし理解力も乏しいし思考ものろい。いかにも談論風発、才気煥発な人がいるが、こういう人は頭のなかでいろんなことがクリアに整理されていて、何をなすべきかを心得ているのだろう。非常にうらやましい。で、俺にとってはそういう人の話ほどなんだかよくわからない。まあ、波長が合わないのだろうけど、すみません、速すぎてよくわかりませんでした。絵に描いて説明してくださいとも言えないので、とりあえず分かった振りをして聞いているが、ああ相手には俺の頭の悪さがばれただろうなあと思うと恥ずかしくてどっかの穴に入りたくなる。他人の話が理解できないというのは鬱病の前触れだそうである。俺は今までずっと他人の話が理解できていないので、万年鬱病みたいなものなのである。どうしたら医院だろうか。でもまあ、そもそも俺は他人の話をあまり聞いていないからな。というか他人の話なんて基本的に興味がないし、わからんこともないが理解するのがめんどくさい。ていうかよく考えるとこの人の話って意味不明だよね。つーか頭が悪いって何?頭が悪いのでよくわかりません、などとひらきなおったりする。まったくもって救いようがない。そういうわけで、俺の頭の中に住み着いている乞食を誰か追い出してはくれまいか。