南の虹のルーシー
「南の虹のルーシー(Lucy-May of the Southern Rainbow)」(1982 日本アニメーション)
全12巻、ようやく観終わった。南オーストラリアでの農場経営を夢みて移住を果たしたポップル一家が、数々の苦難を乗り越えて虹の橋のたもとにたどり着くまでの物語。まったく無名の原作(当時連載中)をアニメ化するという大胆な趣向で、確か名劇のなかでは時代設定がいちばん古かったと思う。タイトルからすると主役はルーシーメイのようだがこれはまあ便宜的なものでいちおう一家全員が主役である。で、あらためて観てみると、基本的には一家の日常生活を淡々と描いているだけである。地味だし貧乏だし、容赦なく不幸は襲いかかる。日本語をしゃべる外人もどき一家の貧しい日常生活をじいっと観ている我々は一体なんなのか、という疑問が首をもたげなくもないが、そこはケイトとルーシーメイのかけあいが絶妙のコミックリリーフになっているのでほとんど退屈しない。名作劇場のなかでもっとも平凡な人たちのような気もするが、それだけに巧まざるユーモアが最大限に生かされている作品ではないかと思う(モッシュの足をルーシーがくわえるシーンとか、カンガルーが樽を覗くシーンとか、計算し尽くしているのにすごく自然だ)。舞台にあわせて動物の描写が多いのもポイントが高い。ヤギもコアラも明らかに笑っていますね(上の画像観てくださいよ)。ハイライトは終盤。まさかと思うようなベタメロ的展開は大映シリーズなみのドラマチックな盛り上がりですが、これは原作にはなく、最終話の感動を補強するための伏線にもなっている。そしてやはり特筆すべきは、オープニングの芸術的完成度(タイトルバックも含めて)、ポップル姉妹の天然ギャグ、自然描写と動物の愛くるしさに尽きるだろう。善良な人々が報われるというシンプルな話が嫌味なく描かれた、地味ながらも微笑ましい実に愛すべき作品だと思います。