我輩はカモである
「我輩はカモである(DUCK SOUP)」(1933 米 レオ・マッケリー監督)
ようやく単品で出たので買った(というかBOX暴利過ぎ)。マルクス兄弟の映画は好きでほとんど観たが、作品としての完成度という点ではやはりこれだろうか。で、あらためて観ると、ぶっちゃけた話が今の感覚で面白いと呼べるかどうかは微妙だ。昔はじめて見たときは悶絶したものだが。まあ、だいたいコメディなんてものはどこかうすら寒さがつきまとうものであり、どんなによくできたギャグでも2回も観れば笑えなくなる。ロイドにしろキートンにしろチャップリンにしろ、古典と呼ばれる作品ですらある種の寒さは避けて通れない。マルクス兄弟の場合、ワンポイント的に優れたギャグが含まれているものの、どれも作品としては散漫だし、ミュージカル要素もおおむね退屈である。というかマルクス兄弟の持ち味はナンセンスなドタバタなので、ストーリーなど不要であり、ワンポイント的におもしろければそれで充分なのだ。なんにせよ70年前にこんなとんでもなくアナーキーなギャグ映画が作られたのは驚異である。グルーチョのお茶目な表情とたたみかけるような饒舌、チコとハーポの狂ったかけあい(ゼッポはよくわからんが)、「悪魔のいけにえ」一家をマルクス兄弟になぞらえた人の慧眼には恐れ入る。ひとつ不満なのは、「空飛ぶモンティ・パイソン」シリーズもそうだったが、VHS版に比べて日本語字幕がヘボくなっている気がする。とくに言葉の語感を使ったギャグ(というか駄ジャレ)は原語でないときついので、ただでさえ翻訳に無理があるのに、これでは寒さが増幅されてしまう。といって英語字幕も80%ぐらいしかカバーできていないのでどっちもどっちか。今回いちばん面白かったのは予告編の「DUCK SOUP」のイラストであった。