けだもの組合
「けだもの組合(ANIMAL CRACKERS)」(1930 米 ヴィクター・ヒアマン監督)
マルクス兄弟のキチガイキャラが見事に生かされた初期の傑作。なんといってもイカれた教授役のハーポが絶品。コートを脱がせたら下着姿でなぜかいきなり発砲。むちゃくちゃである。マルクス兄弟の映画はストーリーに重点が置かれない方が面白い。つまり筋書きがムチャクチャであるほど破天荒なナンセンス度が増すのであって、それがこの映画でも証明されている。「我輩はカモである」同様、万人にお勧めできるわけではないが、後世の芸人連中がぱくりまくったギャグの原型がこの作品ですでに網羅されている。さて「我輩はカモである」で感じたように、どうも一連のマルクスDVDは日本語字幕全体がひどいらしいのだが、今回はさすがに呆れた。おいおいこの字幕はダメすぎだろう。誤植まじりなのもひどいが、はっきり言って訳者のセンスがなっていない。俺は昔ビデオで観た好きなシーンの日本語字幕を手元に残しているので、その差は歴然である。ビデオ版なら日本語字幕だけで笑える。今回原語までチェックして判ったのは台詞がマジで難解ということ。とくにグルーチョ。異常に芸が細かいというか、二重三重に意味がかかっている。しかもそれが速射砲のように飛び出すので、英語圏の人ですらすんなり理解できるかどうかあやしい。日本語字幕はその難解な台詞をむりやり無粋な日本語に置き換えてさらに意味不明にしているだけ。笑えるわけがない。日本語圏の皆さんは言葉のギャグをぜんぶ理解するのはあきらめて、視覚型ギャグだけ楽しむのが無難かも。注意してないと見逃してしまうが、ハーポのおねんねポーズとかブラックジャックとかフラッシュでフラッシュを探すところとか、本当に芸が細かい。かと思えば一転して真剣な顔でハープを演奏したりするのも見どころの一つだ。それにしてもなんというお茶目なラストだろう。ハーポ可愛すぎ。マルクス兄弟で一番好きなラストだ。グルーチョの名台詞も爆笑。