動くな、死ね、甦れ!
「動くな、死ね、甦れ!(ZAMRI, UMRI, VOSKRESNI!/FREEZE-DIE-COME TO LIFE)」(1989 露 ヴィターリー・カネフスキー監督)
この意味深でかっこいい邦題は直訳で、なんかロシアの遊びみたいなもんらしいですが、とても力強くて美しい響きだと思います。時代設定はたぶん1950年代、作風もその時代の空気が濃厚ですが、驚くべきことに比較的新しい作品なのである。貧困の中で健気に息づく子供たちの日常を、例の淡々とした調子で、時に残酷なまでにリアリスティックにカメラが捉える。監督のヴィターリー・カネフスキーは長い間無実の罪で牢屋にぶちこまれていたそうで、冷徹で厳しいまなざしの裏側に鬼気めいたものを感じるのはそのせいか。娯楽的な要素は少ないのでそれなりに退屈もしますが、ワレルカと<守護天使>ガーリヤの間に通う淡い交情が絶妙の繋ぎになっている。ガーリヤがかわいい。決して美少女ではないが、暴力的でありながら思いやりの深い性格は「わたしのアンネット」を髣髴させる。ワレルカがガーリヤのお茶売りを妨害するシーン。「その子のはゴキブリ入りだよ!」怒って追いかけるガーリヤ。こういったささやかな日常が乾いたモノクロの光景のなかで生き生きと描かれることにより、けれんみのない叙情性となって胸に迫るのです。それだけに否応なく暗転していく二人の運命はたまらなく切ない。ダークでありつつ静かに強烈に問いかけるような光景を前にして、しばし言葉を失うほかありません。★★1/2