PERFECT BLUE
「PERFECT BLUE」(1998 日 今敏監督)
一般的にサイコサスペンスなんてものはどれもこれも筋書きが似たようなもので、たいしておもしろくもない。ストーリーだけ抽出すれば犯人が判った時点でどうしようもないぐらい陳腐化する宿命にある。だからそれをどうやっておもしろく見せるかで差が出るわけで、それを怠った場合、典型的な犯人探しサスペンスになって、誰でも犯人になりうるし、誰でもいいし、お約束の意外な犯人が判って終わり、というきわめてどうでもいい作品に成り下がる。その点、この作品は我々にとって何が不快であるかをちゃんと心得ていて、浮遊するアイドルの幻影、偏執狂的描写の徹底したきもさ等々、計算しつくした後味の悪さも含めて確かな演出力で描き出し、観ごたえのある不快なサスペンスに仕上げている。ただまあ今さらこういうよくできたサイコサスペンスを観てもへぇーとふーんの間ぐらいの感慨しか湧かないので気の毒と言えば気の毒である。さてと、私もそろそろ現実に戻らなくては。おお、出口はどこだ?★1/2