テキサス・チェーンソー
「テキサス・チェーンソー(THE TEXAS CHAINSAW MASSACRE)」(2003 米 マーカス・ニスペル監督)
弾丸がリアウインドーをぶちぬいて牛がモーと鳴くまでは本当によかった。牛・豚・鶏の悲鳴を効果音に使用して狂気を煽る手法も好ましい。が、これは典型的なダメホラーですね。単純につまらないです。全体的にお行儀がよすぎる。せこせこ動き回るこざかしいカメラワーク、過剰な悲鳴と音楽とこれみよがしの<恐怖>演出、そのくせきっちり辻褄を合わせようとする抜け目のなさ。つまり徹頭徹尾、平凡なのである。主役の女がギャーギャーわめきだしてから心底どうでもよくなりましたね。クリアすぎる画質でちまちまとリアリティを追求すればCGと同じ作り物くささが浮き彫りになるに決まっているのだ。どうせなら「壁の中に誰かがいる」みたいな思い切ったコメディにすればよかったのにね。ところで、なんかオリジナルと比較すると怒る人がいるみたいなので比較しておきますと、ギャグも不快感も有無を言わさぬ破壊力も足りないし、はっきりいって比較にならないですね。というか、オリジナルがどうのこうのと言う問題ではない。そもそも忠実なリメイクではないし、一部の設定を借用して大幅に脚色した別バージョンなので、比較じたいに意味はない。そういう意味では、むしろオリジナルの正当な続編である「悪魔のいけにえ3/レザーフェイス逆襲」(なぜこの傑作を否定する人が多いのか俺には理解できない)と同じ位置付けにあるはずなのだが、あれと比べると圧倒的に見劣りするのは何故なのだろう。こちらが当世風の腐った感性で作られた猿真似以下の代物なのは明らかである。ハリウッドのダメなところ(それは同時に長所でもあるが)がこの映画に凝縮されていると言っては言いすぎか。それにしても、旧作をリメイクするとおおむね質は下がるが登場人物のバカ度だけは確実にアップするのはどういうわけなんでしょうね。ξ