あの鐘を鳴らすのは松尾芭蕉
"You, beggar!" "I beg your pardon?"
おれは名もなき托鉢僧。
民家を一軒ずつ訪ねてまわり、小銭をもらうのがおれの仕事。
誰が乞食じゃコラ。
まあ乞食には違いないが、托鉢はもっともポジティブな乞食行為である。
筵をひろげて頭を下げるだけならサルでもできる。
いっしょにされては困る。
逃げても無駄だ。
どこまでも追いかけていって小銭を要求するぞ。
小銭をくれるまで玄関で奇声をあげつづけてやる。
なぜそんなことをするかって?
きまってるじゃないか。
おまえがお金をくれないからだ。
托鉢とは忍耐力を競い合う高貴なスポーツである。
目には目を。イヤガラセにはイヤガラセを。
相手が根負けするまで続く玄関ごしのデスマッチ。
きちがいもいればやくざもいる。変態もいれば宗教もいる。
まさに命がけの死闘。
だが引き際も大事である。
奈良の騒音おばさんを忘れてはいけない。
訴えられる寸前でやめるのがコツだ。
そうしてせこせこためたお金で
エロ本をいっぱい買うのだ。