Grand-Guignol K.K.K

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もろびとこそどろ

近所のビデオ屋に行くためチャリンコをこいでいると、みるからにうさんくさい風体の二人組バイクが横につけてきて、歩道の隅に停車させられた。二重ロックがどうの、取り締まり月刊がどうの、果ては防犯登録番号を確認したいなどと意味不明なことを言い始めた相手をにらみながら、私の心はみるみる疑惑の念に支配された。こいつら何者だ?
みればみるほど怪しいのだ。警察にみせかけて信用させ、金品をだましとる詐欺グループではないのか。まず、自分が何者であるかを名乗らなかったのが怪しい。丁重な物腰もどこかぎこちなく、笑顔もどことなく怪しい。よくみると3億円事件の犯人のモンタージュ写真に似ている。おまけに、一人は昔の銀行強盗みたいにハンカチでマスクをしていた。いまどき中核派でもこんなファッションはしない(たぶん)。見せてもらった警察手帳がニセモノぽかったし、それになんといってもバイクがダサかった。なぜよりによってスーパーカブなのか。過去に職務質問されたことはあるが、みんなちゃんとした制服を着ていたし、かっこいいバイクにも乗っていた。
そのうちいきなり棍棒で殴られるのではないかとか、いますぐこの口座に百万円を振り込まないとえらいことになる、なんて話にならないかとビクビクしながら、「本当に警察ですか?」とかなりしつこく相手の身元を問いただし、「警察に見えないのだが」「目的は何か?」「協力する必要はあるのか?」とごねつづけた。いまに向こうがあきらめるか、ボロを出すかもしれない。いっそのことあのトランシーバーみたいなものをひったくってやろうか。オモチャだとわかればこっちのものだ。
やらなくてよかったと思う。今にして思うと、あれは本物の警察だった。
しかし私は最後の最後まで彼らがニセ警官ではないかと疑いつづけた。車体番号と防犯登録番号を確認されている間も、これが猿芝居だったらただじゃおかねえぞ、と心の中で呪っていた。
けっきょくなにごともなく解放されてから、怪しまれたのは自分の方だったと気づいてショックを受けた。