とむらいレストラン
主として関西圏の貧困層が公園の鳩に全力で豆をぶつけたり鬼門に向って笑顔で巻き寿司を喉につまらせたりしているとかいうまさにその日の夜、私は地上を遙かに見下ろす高級レストランでタダ飯を食っていたわけだが、至って食い意地の張っていない私としては(今日の昼食のお釣りは666円だった)ああいう気取った料理が見た目ほど美味くないという結論に達せざるを得ない。というか、食いにくいし栄養バランスは悪いしおまけに支配人みたいなのがうろちょろしてどうでもいいことを神経質に問い詰めてくるので無駄に疲れる。呼び止めた声に振り向いたそいつが明らかに踵を軸にターンしたのがマンガみたいで印象的だったぐらいである。こうして私はたいした感慨もなく、目の前をちらつく嬉しそうに巻き寿司を喉につまらせる貧困層の幻影をはらいのけながら家路に着いたのだった。明日は寒いらしい。氷点下だそうである。この寒さではただでさえ死にやすいのに、諸君が貧乏ならなおさらであろう。私は諸君のことが心配だ。心配なのだ。だがそんなに心配しなくてもいい。朝からじたばた動かずに、おとなしく寝ていなさい。そうしたら死なない。これが私からのせめてものアドバイスだ。