デビルマン
「お姉ちゃん、何をみているの?」
「心の中をみていたの。青い空があって、海がキレイで、緑の森がどこまでも・・・」
「そんなとこ、もうないよ」
「デビルマン(DEVILMAN)」(2004 日 那須博之監督/永井豪原作)116分
なんだか異常に評判が悪い映画なのでさぞかし救いようのないゴミなのかと思っていたら、違う意味で期待を裏切られた。いやはや、心の底から大笑いできるコメディ映画に出会ったのはいつ以来のことだろうか。深刻さを装った展開のなかに唐突にシュールなギャグが挿入されるので一刻も油断がならない。とりわけ大根と紙一重の主人公のシュールな台詞回しにはおなかの皮がよじれっぱなしでしたね。デビルマンがへちょいCGアニメと判った瞬間は脱力しましたけども、それをアテレコひとつで極上のギャグシークエンスに変身させる高等テクニックに脱帽です。人類の愚かさを誇張するためとは言え、並のスプラッターを軽く凌駕するエグイ描写は別にいらないんじゃないかとも思ったが、全体的に嘘っぽいので欠点にはなっていない。というわけでそのコミカルな世界観ばかりが先行する感もある本作ですが、実はところどころ前衛絵画のような奇抜なイメージに彩られていて、特に畳みかけるようなクライマックスのビジュアルが出色。焦土と廃墟が涯しなく続く終末世界の壮大なスケールに軽く鳥肌が立った。これは間違いなくCGでなければ表現できない世界で、悪くない。ラストもちょっと泣ける。日本映画界のフロンティアを切り拓いたと言っては明らかに言いすぎだろうが、少なくとも世紀末コメディというジャンルの可能性を提示した点で高く評価できるのではないだろうか。まあ、世評の尻馬に乗っかってまるで監督の頭のねじがゆるんでどこかへ飛んでいったかのようなわかりやすい酷評を垂れている連中に比べれば遙かに魅力あふれる珍品と言えましょう。★1/2