宇宙戦争
「宇宙戦争(WAR OF THE WORLDS)」(2005 米 スティーヴン・スピルバーグ監督/H・G・ウェルズ原作)114分
宇宙から怪光線が降ってきたその日、三本足のタコ型ロボットが地面からワラワラと這い出し、下痢便をまき散らしながら街を破壊し始める。それは太古の昔から地球に目をつけていた宇宙人のしわざだったのだが、どうやら彼らが住んでいた星が何かの事情でヤバくなってきたため、100万年前にあらかじめ埋めておいたマシンを使って今ごろ地球侵略にかかり始めたという複雑な背景があるらしい。リアリティなど皆無の筋書きゆえ、無駄に超能力をもって生まれたタコダちゃんが宇宙人とのサイコバトルのすえ命と引き換えに地球を救うというドラマチックな展開や、なんかの実験中にうっかり放射能を浴びて巨大化したトム・クルーズが素手でトライポッドを叩きのめすといったファンタジックな展開が用意されていてもよさそうなものだが、破滅へ向かってヒステリックに疾走する人間どものひたすらどうでもいい内情がダラダラ描かれるだけなので、キャスティングに無駄に金をかけたゾンビ映画を観ているような錯覚を覚えた。やはり最大の問題は主人公がトム・クルーズだという点だろう。なんだかんだでこいつが死ぬワケないので、半分気が抜けた状態で観るはめになるのだが、その割にやたらと緊迫感を煽ってくるので疲れた。あと、ウォー・マシンのクラシックなフォルムと伝染病で全滅する宇宙人のプリティーな触手が萌えだった1953年版「宇宙戦争」に比べると、こちらはマシンもウチューヂンもギーガーのエイリアンもどきであまりかわいくありませんでした。というわけで、侵略SFコメディの傑作「サイン」には遠く及びませんが、街がオモチャのようにコッパ微塵に破壊されたり人間が派手に吹っ飛んだり檻の中でいたぶられたりするシーンの爽快さ、そして河原へオシッコに出かけたタコダちゃんが無数の漂流死体を目撃する幻想的なシーンの美しさには心を打たれました。★