屈辱ポンチ
『屈辱ポンチ』(町田康著)
映画「けものがれ、俺らの猿と」を原作と比べてけなしている人が多いので、なんとなく原作を読んでみた。
「けものがれ、俺らの猿と」・・・おそらく最低人間であろう「自分」が、悪夢のような状況に否応なくまきこまれていく様を描いた作品。夢のなかで何かを片付けようとして一向に片付かない感じ、整理をすればするほど散らかっていくあのイヤあな感覚に似ている。永遠に続くカオス。映画は原作を律儀になぞった感じで、とりたてて難じる点はないように思う。★
「屈辱ポンチ」・・・まちがいなく最低人間であるところの「自分」が、見知らぬ人間を追いつめるため、あらゆる嫌がらせの実行に奔走する話(そしてもちろん失敗する)。けものがれ、は映画を先に観ているせいか、こっちの方がいいと思った。
おもしろかったのは鳩に関する考察部分。
しかしこうしてつくづく眺めてみると鳩というものは、みな同じように見えてその実、一羽一羽、様子の違うもので、もっとも一般的な灰色の奴がいるかと思ったら茶色のがいる白いのがいる、また、それらが混じり合ったような複雑な紋様のもいて、いずれにしても天晴れなのは、それだけいろんなのがいながら、一羽として、美しいなあ、と思う色のがいねぇってとこである。みな汚い。100パーセント同意(笑)。★1/2
【総評】見事にスカスカの内容で、あっという間に読み終わった。漫画調の文体というか、口語体でオノマトペを多用した語り口さえ気にならなければ、内容がないのでスラスラ読み飛ばせるし、後にはナニモノコラナイ。ある意味理想的な暇つぶしである。活字のポイントが大きく、字間・行間が広いのも読みやすさを助長している。★1/2