サスペリア PART2 / 紅い深淵 完全版+公開版
「サスペリア PART2 / 紅い深淵 完全版+公開版(DEEP RED/PROFONDO ROSSO)」(1975 伊 ダリオ・アルジェント監督)
かったるいコメディシークエンスを始め不要なシーンをばっさりカットしたテレビ放映版「サスペリア2」は私の人生を狂わせた、あるいは本来のあるべき方向に覚醒させた魔術的作品なのでそれ以外のバージョンを「サスペリア2」であるとは断乎として認めたくないのですが、いやしくも(この場合は卑しくもと当てます)「サスペリア2」が大好きであります、などと自称するからには当然既発のすべてのバージョンのDVDを所有していなければならず、従ってビームエンターテインメントのしょぼい完全版、アンカーベイのこれまた中途半端な完全版、そしてこの完全版+公開版の併録版という3本のDVDが我が家に存在しているのは何の不思議もないのである。そもそもこの完全版というやつがたいへんな曲者で、公開版の足りない部分を原版で継ぎ足しているため英語で試聴していると突然イタ語が混じるという迷惑きわまりない代物であってこれのどこが完全版じゃいと怒り心頭なのでございますが、今回初めて公開版とやらを観て感じたのは、まだ長いということ。というか完全版とどこが違うのだ。確かに尺は短くなっているようだが、どこがカットされているのかまるでわからん、ということは完全版がいかにどうでもいいシーンをいっぱい含んでいたかということ、そしてこの公開版がまだまだカットできるシーンを含んでいるという証左にほかならぬ。もちろん殺害シーンのテンションが尋常じゃないしアルジェントの変態性から発するところのグロテスクなギャグの数々には惚れ惚れするのだが、ああーここはこうじゃねえだろとか、挿入のタイミングが悪くコメディリリーフになるどころか物語の流れを分断するだけの冗長なゆるいシーンの数々はどう考えても不要だろうとか、なんだこのクソみたいな日本語吹き替えは田舎へ帰れとか、微妙に俺のなかの理想像と違うので観ているあいだ常にイライラし、ラストシーンも"you have been watching DEEP RED"って表示されるところは血だまりのなかデビヘミが虚脱している倒立像の静止画にいきなり切り替わるけれども本来はマークが深い絶望とともに手で顔面を覆うシーンの続きでなけりゃいかんのであって、ビームの旧版ではそのようになっていたはずなのにこのDVDではなぜか公開版はおろか完全版にいたるまでそうなのであり、なぜですか。あー、なんかワシきもいヲタみたいなこと言っとるな。いや、きもいヲタそのものか。どうだきもいだろう。ひひ。さて、はやく死に場所を探さねば。そういうわけで、死に場所が見つかるまでの間、フィルム傷だらけの褪色して枯れた荒い画質、スタンダードサイズの日本語・英語二ヶ国語収録、あちこちカットされて効果音なんかも勝手につけられたテレビ放映版(CMつき)こそが私にとっての「サスペリア2」なのです。