チャーリーとチョコレート工場
「チャーリーとチョコレート工場(CHARLIE AND THE CHOCOLATE FACTORY)」(2005 米・英 ティム・バートン監督/ロアルド・ダール原作)115分
ウィリー・ウォンカはチョコレート工場を経営する心を病んだ中年男。好きでもない子供をおびきよせ、憎たらしいガキ、可愛げのないガキをコテンパンに叩きのめすという素敵な計画を思いつきました。悪いコドモ、傲慢なコドモ、バカなコドモ、ムカツクコドモには確実にオシオキが待っているのです、育てた親も同罪、ついでにまとめてオシオキだ!・・・というロアルド・ダールの有名な原作を映画化した「チョコレート工場の秘密」(1971)を観たときワタクシもいたく狂喜したものです。無邪気な悪意を秘めた原作の幼児的世界観を損なうことなく、何もかも仕組まれたかのような悪意の法則に従って話は進行、貧乏人が最後に勝つというお手軽ファンタジーではありましたが、あくまで信賞必罰の教条主義、スパルタ式の世界観がすばらしいと思いました。で、このリメイクですが、画面が綺麗になった分うさんくささやインチキくささ、粗野でキッチュなパワーには欠けるものの、みなぎる邪悪さと狂気が素晴らしいですね、ウンパルンパのオレンジの顔面と例のテーマ曲が再現されていなかったのは残念ですが、代わりにリスに襲われるシーンなんかアレンジとしては見事なものです。それになんといっても、ジョニー・デップがきしょくわるい。他者の欺瞞性を暴き立てる虚ろな暗い眼差し、なにを考えているのかわからない意味不明かつ挙動不審な言動。工場内を原色の地獄絵巻に変えてヘラヘラしている白塗りのキチガイ中年は、まさに怪優ジョニー・デップの真骨頂でしょう。一方、「チョコレート工場の秘密」と違って、ウィリー・ウォンカが異常な人格を形成するに至った経緯がサイドストーリー的に回想されるのが特徴で、ご丁寧に後日譚まで用意されてあり、ウィリー・ウォンカ自身が更生するまでを律儀に押さえている。過去の言動の異常性を思えばラストのほのぼのムードは明らかに不自然ですが、こういうハリウッドの教本的なわざとらしいオチも作品の性質上やむをえないのかという感じです。★1/2