渋く、薄汚れ。ノワール・ジャンルの快楽
『渋く、薄汚れ。ノワール・ジャンルの快楽』(2006 滝本誠著)
わたくしは基本的に映画評論というものを信用していない(というか意味がわからない)のでこの手の本を手にとることなど滅多にないが、たまたま道に落ちていたので拾って読んだ。じつは以前タルコフスキーをネット検索したとき、ひっかかったこの人の紹介文がいちばん面白かった(意味はわからなかったが)ので名前を覚えていたのである。で、これは筆者がノワール・ジャンルと呼ぶ暗黒映画とその系譜に属する作品群について、気の向くままに綴ったエッセイといった趣の本。紹介されているのは知らない映画が大半で、またゴシップ関係の記事は興味がないので読み飛ばしたが、作品の選択眼がなんとなく好みなのと、評論と呼ぶには非論理的でむずがゆいような行間の暗いポエジーが魅力的なのでそこそこ退屈せずに読めた。個人的に苦手なコーエン兄弟はノワールなのかとなんとなく納得したり、「狩人の夜」がひさしぶりに観たくなったり、意外と観ていないキューブリックの「現金に体を張れ」がとても観たくなったりした。★1/2