復讐者に憐れみを
「復讐者に憐れみを(SYMPATHY FOR MR. VENGEANCE)」(2002 韓 パク・チャヌク監督)117分
「ガンホ先輩に拷問されるシーンが一番印象に残ってます。」(ペ・ドゥナ)
憐れみはとくに感じませんでしたが、「オールドボーイ」より断然いいと思いました。まず特筆すべきは、水死体の美しさです。川を流れる少女の死体を仰臥でとらえた水中ショット、ならびに岩礁にひっかかり水面に突き出た半身の眼が水面に映ったもうひとつの眼とあわせて恨めしげにみつめるショット、これは「月下の恋」「ゴーストシップ」の水死体にも匹敵する素晴らしいシーンだと思います。難点としては前半の展開がしんきくさく、人物関係が把握しづらい。唐突にワープしまたシンクロするわかりにくい演出が連続し、どーもよーわからんと思いながら早送りボタンを押すのを我慢しているうちに、後半になってようやく復讐の形が明瞭になる。犯人が判明する過程の都合がよすぎるというストーリー上の短絡や二度観しないと腑に落ちないシーン、二度観しても腑に落ちないシーンはあるものの、不幸は網目のように連鎖し、不幸を及ぼした者は同じ刀で報いを受けるという、因果応報の物語を地で行った正統派のノワールである。ラストは当初の予定を変更したということだが、やっぱり八方まあるく死んでオワリというのが映画のラストの理想形のひとつだと思いますね。天網恢々粗にしてお漏らし*1と申しますが、人は条理を理解できないがゆえに、この世の掟は不条理そのものであるという、痛烈な皮肉がラストの長い長い怨嗟にこめられている。★1/2
*1:わたくしがさっき作ったことわざ