サマリア
「サマリア(SAMARITAN GIRL)」(2004 韓 キム・ギドク監督) 95分
「笑わないで。何がそんなにおかしいの。もう笑わないで」
「バスミルダ」「サマリア」「ソナタ」の3部構成。ヨーロッパ旅行の資金調達のため笑顔で援助交際に走るチェヨン(事故で死亡)、彼女への贖罪のため無償ファックの巡礼によりチェヨンの行為を浄化(無化)しようとするヨジン、その痕跡を御礼参りで執拗につぶしていく父親のヨンギ。取り返すことと失うことが同義でありながら、真逆を向いてすれちがう父娘の姿はせつなくやるせない。いつしかそれは父娘が無言で語り合う旅の景色と重なっていく。ラストはロードムービー風の(「●リイカ」的な)安い癒しだが、そこには清算もなければ安易な断罪もない。ただ待ち受けるであろう日々が苦行にも似ているだけだ。儒教の国に似合わぬ反道徳的な内容でありながら、聖性や救済といった宗教的な意味合いを帯びている、ゆえに本作には一筋縄ではいかない魅力がある。★1/2