息子のまなざし
「息子のまなざし(LE FILS)」(2002 白・仏 ジャン=ピエール・ダルデンヌ/リュック・ダルデンヌ監督)103分
貧乏少女の悲惨な生活をギャグとエロスを交えつつ描いた傑作「ロゼッタ」により、カンヌ映画祭における「貧しい人たちの暮らしを淡々と見つめよう」キャンペーンの急先鋒となった感もあるダルデンヌ兄弟。娯楽を前提とする商業映画から一線を画すそのスタイルは要するに効果音の排除や無表情なカメラワークといった擬似ドキュメンタリーの手法ゆえ、彼らが好んで描く貧しい人たちの姿は偽造されたものに他ならないし、また赤絨毯の上の人たちに貧困の光景がもの珍しく映るのは致し方ないという事実、ならびに追いかけっこ&取っ組み合い→唐突な幕切れというワンパターンの図式を差し引いてもなお、それらがギリギリのところで映画たりえているのは、ダルデンヌ兄弟の日常への過剰なまでの真摯なまなざしと、ある種の唐突さがもたらす解放感(救われなさによる救い)ゆえであることは論を俟たない。しかしながら本作に登場する華のないおっさんと少年の陰鬱きわまる言動を90分以上も見つめる作業はさすがに難行苦行のたぐいであったと言わざるを得ない。★