誰も知らない
「誰も知らない(NOBODY KNOWS)」(2004 日 是枝裕和監督)141分
トランクの上に置かれた汚い手とボロボロの服を着たゾンビのような子供。冒頭のこの暗示的なショットに導かれ、ラストシーンまで釘付けになった。「鬼畜」や「震える舌」とかでもそうだが、まず子供のヘタウマ演技の凄さに圧倒される。加えて子供たちが置かれた過酷な状況を禍々しいジャリアイテム(「まま」の絵の凶悪さ)と手や足の接写で語らせるのだからたまらない。救いとしては末っ子のゆきちゃんがとてもカワイイという点だが、そのゆきちゃんを葬ることで本作は観客に傍観者であるという事実と無力感を否応なく突きつける。1980年代末に実際に起こったもっと悲惨な事件に着想を得た作品らしいが、だからと言って映画という擬似現実に異を唱えるのはお門違いであろう。現実と空想の区別がついていないのではないか(笑)。あと長女もかわいかったし、女子高生もかわいかった。いい映画だ。というわけで、141分はさすがに長いものの、お手軽に絶望を味わってみますたみたいな欺瞞的な作品(「害●」「ユリ●カ」)が多いなか非常に丁寧で真摯な秀作でした。少なくとも、朝陽のさしこむ車窓を背景に虚脱する泥だらけの二人のショットの美しさは類を見ないものである。まさしく《異臭を放った宝石》。★★