疾走
「疾走」(2005 日 SABU監督/重松清原作)125分
「だいっきらい、あんたたち。あんたたちの家、ぜんぶ燃やしてやればよかった。沖も浜も、ぜんぶ燃えちゃえばいいのになあって思ってます。そしたらざまあみろって言ってあげます。みなさんさようなら」
失笑 1ねん1くみ いしざかこうぢ
いやー、参った。韓英恵たみゅが目当てで観たのは言うまでもないが、あまりにおもしろかったので、もう少しでDVDを注文するところでした。シリアスドラマが意図せずして超弩級コメディに変貌する瞬間というものがたまにありますが、その稀有な例がこの「疾走」です。全編に信じがたいほどクサイセリフ、ハズイシーン、ありえない大根演技が炸裂しており、観るものをまったく飽きさせない。なによりすごいのは同じ監督の撮った超つまんねーコメディなんかよりよほど笑えるという点です。脚本がにやけていてはこんな凄みが出るはずもなく、シャブ漬けの野島伸司がやけくそで書いたかのような不幸のマンダラ絵巻には脱帽せざるを得ません。とりわけ、手越くんに台詞を与えすぎたことが奏功し「デビルマン」なみの破壊力を生んでいます。「あーうー」(遠吠え)「うううううう」「わーっ、わーっ」といった印象的な台詞を書き出しているだけで映画のシーンのひとつひとつが鮮やかに脳裏に甦るようです。怒濤のクライマックスでは韓英恵たみゅもさすがにドン引き、思わず超棒読み台詞「やめてよー、あぶないってばー」が飛び出す始末。いや、別にバカにしているわけではなくて、純粋におもしろいのです。神父役の豊川悦司もよかったし、中谷美紀も大杉漣も寺島進もよかった。結局なにが言いたいのかよくわからない作品ではありますが、信仰というのは一種の麻薬みたいなもので、脳は麻痺しますが一見きわめて理性的だから怖いのですね。マジでおすすめです!★1/2