Grand-Guignol K.K.K

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プリクラは死の香り


ここだけの話だが、わたくしは電車のなかで女子高生を観察するのが好きです。
どうか通報しないでいただきたい。諸君があとでがっかりしないようあらかじめ言っておくと、諸君のウンコ色の脳細胞がつむぎだす名推理の数々はすべてこれハズレでごんす。諸君の想像するようないやらしい意味の観察ではない。わたくしはこの通り性格が悪いため、油断している他人のまぬけな行動をついじろじろ観察してしまうのであって、その格好の餌食が電車のなかの無防備な女子高生たちというわけだ。もちろん美しい可憐な女子高生を眺めるのも心癒されるが、どちらかというとあまり頭のよろしくない、映画で言えばB級ホラーのような女子高生を見ている方が楽しい。間違った知識を教えあっている女子高生たちの姿を見て「アホすぎる(笑)」とほほ笑んだ経験は誰しもあるだろう。じじつ、彼らのまぬけな生態を観察していると珍奇な動物としか思えないことがある。
しかしどうも最近、彼女たちを見ていてだんだんブルーになってくる場合が多いことに気づいた。女子高生の言動が不快だとか説教してやろうとかいうことではなく、文字通り憂鬱な気分になってくるのである。なぜか。こんなことを言うと頭がおかしいと思われるかもしれないが、彼女たちからはほのかに《死》の匂いがたちのぼってくるような気がするのだ。もちろんくさいという意味ではない。そもそも人間などミクロレベルでみたらそれなりにコギタナイし、どいつもこいつもニオイの魔術師みたいなものだから、他人のことをとやかくは言えない。そうではなくて、説明がむずかしいのだが、たとえば好ましい匂いの単位をfrg.、好ましくない匂いの単位をodr.で表すとして、死の匂い1dth.とは、1frg.*1odr.のような感じの匂いである。で、腐り始めた死体の匂いを10dth.ぐらいとして、女子高生には平均5.5dth.ぐらいの死の匂いがただよっているような気がする。それはたとえば女子高生が身に着けているよれよれのセーターにへばりついた毛玉の数に比例して、あるいはかばんにぶら下げられたくたびれつつあるマスコット(淡いピンクや水色などの明色が多い)の褪色と相まって、はたまたきちがいのような勢いで携帯電話に貼られた汚いプリクラ写真の放つ邪悪な念となって、彼女たちの身体から放射能のように漏れてくるのだ。とりわけプリクラのなかで尋常でない晴れやかな腐った笑顔をふりまく見ず知らずの彼女たちは、まるで陽気な死体写真のように見える。若々しい身体に死をまとって歩く女子高生たち。その落差が彼女たちの《死》の匂いを際立たせる。わたくしは頭がおかしいのだろうか。そうかもしれない。
わたくしはまるで自分が幽霊にでもなったかのようなものがなしい気分になり、窓の外に目をやりました。ふとみるとガラス越しのビル群の間に幽霊がゆらりと佇んでいた。あ、幽霊やと思ってよく見ると車内の吊広告の舞風りらが窓ガラスに映っているのだった。
舞風りらがいったい何者なのか、わたくしには知るよしもなかった。