画太郎先生ありがとう―いつもおもしろい漫画を描いてくれて…
『画太郎先生ありがとう―いつもおもしろい漫画を描いてくれて…』(漫☆画太郎)
漫☆画太郎というひとの漫画はどこかのゴミ箱でひろって読んだおぼえがあり、やたら汚い画風のひとという印象しかなかったのだが、今回なんとなくこれを買って読んで確信した。漫☆画太郎は間違いなく日本キチガイ十傑のうちの一匹です。まず、全編にあふれるさわやかなゲロとウンコと暴力描写に目を奪われるが、ただ単に汚いだけではなく、異常な画力によって裏付けられたものであることがわかる。描きこまれたページの圧倒的な汚さと裏腹に手抜きページの狙いすました脱力感。つまり技巧面でのうまさと、やる気のなさをもギャグへと転化するしたたかさ、この落差が漫☆画太郎の漫画の特異なゆらぎを形成していると言えるだろう。また物語に目を転じてみれば、あくまで古典的なわかりやすい構造に唐突で理不尽な変転を加味し、オチという凡俗の概念を超越したシュールなクライマックスへと結びつける。「災いは口のもと・・・」の異常なラストは有無を言わさぬコマの迫力のみによって暗澹たる余韻へと読者をたたきおとし、「楽しい遠足」ではウンゲロバイオレンスの世界から一転、青空のように突き抜けたさわやかな絶望へと無理やりねじふせる。一見めちゃくちゃだが、いずれもまともな神経では構成しえない、手の込んだ手抜きあるいは剛速球の投げやりとも言うべき力技であり、その破壊力は並ではない。たしかにありがとうと言わざるを得ない。★1/2