エコール
「エコール(INNOCENCE)」(2004 白・仏 ルシール・アザリロヴィック監督/フランク・ヴェデキント原作『ミネハハ』)121分
予約注文しておいたDVDが届いたので正座して鑑賞*1。周知のとおりルシール(リシャール)・アザリロヴィックといえば相方のギャスパー・ノエと共謀し「カルネ」「カノン」「ミミ」といった陰惨系ロリ映画ばかり作っている真症の変態監督(女)であり、本作に対するわたくしども変態の期待も否応なく高まるというものです。物語の舞台はどことも知れない山奥の隔絶された地にたたずむ謎の寄宿舎。厳格な規律に支配されたその聖域では《外部》から拉致されてきた少女たちが無邪気な様子でバレエの修行に励んでいた・・・。某人民共和国なら普通にありそうな怖ろしいシステムで、実際ファンタジックな要素よりも全体的にホラー色が強いように思います。これはもう200年も生きている魔女が校長を務める呪われたバレエスクールに違いないと思わせるのですが、ステンドグラスを突き破った首吊り惨殺体が天井からぶらさがったりするようなかっこいいシーンは残念ながら見当たりませんでした。そのかわり少女たちが楽しげに水浴びをしたりフラフープをしたり縄跳びをしたり側転したりレオタード姿でバレエの特訓を受けたりする模様が延々と活写されます。初潮前後の少女の姿態にエロスを汲み取る手腕は見事というべきで、確かに純粋に少女を観察するための映画としては申し分なく、事実そのような視点で観るのがもっとも正しい鑑賞態度かと思います。しかしだからといってこの作品が少女映画の傑作になりえているかというと、これは残念ながらノンといわざるを得ません。視点が散漫で起伏のない展開と不相応に長い尺のため途中であくびを催してしまいますし、幼年期(イノセンス)の終わりをトンネル、性衝動の目覚めを噴水で表現する隠喩のベタさや、「思春の森」のような陰惨美とカタルシスが決定的に欠如している点も不満が残る。むしろこの不自然な拉致・調教システムに疑いもなく順応する少女たちの無邪気さがなんとも不気味で印象的でした。★1/2
*1:うそ