笑う大天使(ミカエル)
「笑う大天使(ミカエル)」(2005 日 小田一生監督/川原泉原作)92分
「あんたら、エサのいらんネコ飼うてるやろ」
優しい白痴のための輪舞曲(ロンド) 1ねん1くみ そうさこん
ミッション系お嬢様学校と云えば、健全な男児なら誰しも一度でいいから女装して潜入してみたいと妄想する憧れの聖地のひとつであることは論を俟たぬ。長崎ハウステンボスで撮影した映像をギトギトに加工したらしい本作はその浮世離れした世界観と薄っぺらいCGとの親和性の高さが幸いして絵に描いたモチのごとき安っぽいお嬢様幻想を映像化することに成功している。また襟ぐりの開いた肌を強調した体の線もあらわな制服デザインは庶民のお嬢様幻想をエロティックに補強して余りあり、秀逸。ここまでのお膳立ては比較的成功していると云える。致命的だったのは主役の上野ずり。黙っていればまあかわいくないこともないがそのでしゃばりなキャラクターが終始神経に障るうえ、関西弁のモノローグがうざすぎる。お嬢様の対極としての庶民=下品=カンサイジンという設定は核心を突いていると云えるが、必要以上の関西弁の強調は、カンサイジン特有の下品さやオワライに対する傲慢な妄信みたいなものをモロに出す結果となった。それにひきかえ、静姫役の佐津川愛美たんの可憐さを見よ!端役ながら楚々としたお姫様を完璧に演じ、圧倒的な存在感を示している。「真夜中の少女たち/センチメンタル・ハイウェイ」も結局買ったぞ畜生(笑)。さらに、うわすべり気味のギャグ(のつもりだと思うが)とスカスカの脚本が百歩譲って確信犯だとして、ところどころ笑える前半とシリアスな終盤は悪くない。問題はとってつけたような中盤の展開。飛躍しすぎて完全に破綻しているうえ無駄に長いアクションシーンがどうでもよすぎる。しかしながらここでもっとも手に負えないのは、映像技術に対する監督の過信、即ちCG映像の限界について監督がまるでわかっていない点である。物語中盤の稚拙きわまるCG遊びの連続には、まさに大好きな玩具で遊びたいがために映画を作ったかのような本末転倒を感じる。実写に対して一定比率を超えてCGを使用した場合、その違和感は両者に対して作用する以上、CGが嘘くささを前提とした映像のなかでしか有効に機能しえない事実は素人でも解るはずであり、とりわけ本格アクションとCGが馴染まないという事実をこの監督がどこまで認識しているのか甚だ疑わしい。それはそうとてっきり消えたB級アイドル(あの人わいま)のひとりと思われた平愛梨が準主役で出ていることにちょっと驚き。★+ξ