雨の町
「雨の町」(2006 日 田中誠監督/菊地秀行原作)95分
「知ってますこの雑誌。おかめ食堂においてありました。きもちわるいんで読んだことないですけど」
「行方不明にならないでくださいね」
「なんですかこれ!・・・きもちわるっ」
目隠しホラー 1ねん1くみ おかだますみ
「最後通告」(フレディ・M・ミューラー)の神隠し不条理ホラーに「ボディ・スナッチャー」「白い眼」のSFホラー風味を加えた感じだが、これはいいですね。「ホラー映画は怖くない」というのがわたくしの持論なのだが、本作の前半はまじで怖かった。真に凶悪な映画とはこういうのを言うのであって、できれば現実に遭遇したくない不快な瞬間を抉り出す鮮やかな手さばきに感銘をおぼえた。冒頭からして異常で、布袋を頭にかぶった子供がゾンビフォームで疾走するシーン、高校生の産んだ女の子が手で顔を覆いながら「見えない見えない、何にも見えない」と部屋のかたわらを走り抜けるシーン、裸の子供の後姿が廊下をトコトコ逃げ去るシーン。これらに共通する特徴は、彼らがみな視覚を奪われているということ。視覚をもたない小型の生き物が不明瞭な意志をもって動きまわる恐怖であると言えよう。あえてたとえるならば自動人形の怖さ。「みえ」と書かれた墓標の禍々しさとそれをいきなり陥没させるシーンは、まさに「見えない恐怖」を象徴しているかのようである。残念なことに、後半のCGクリーチャーで萎えた。せっかく正体不明で説明不能の謎を扱っていたのに、CGを使った時点でこれはぜんぶ嘘ですよとネタバレしたのと同じ。こういうのはわけがわからないのがいいのであって、手品のタネと同様、永遠に解けない謎の方がはるかに魅力的なのだ。とはいえ近年のへちょい邦画ホラーとは一線を画す作品なので、そこらへんはあえて目をつぶりたい。話は変わるが福祉課の香坂さん萌え。真木よう子たんっていうのか。惚れた。もちろん草薙幸二郎も萌えである。★1/2