ブルーフィルム 青の時代1905〜30
「ブルーフィルム 青の時代1905〜30(POLISSONS ET GALIPETTES)」(2002 仏 ミシェル・レイヤック監督)69分
オモイデブルー 青褪めし死の記憶 1ねん1くみ ひろひと
朕思ふに、古いフィルムの醸し出す凶悪さとは死の記憶の禍々しさに符号する。もはや確実に骨と化してゐるであらう百年前の人々が一切の情緒を交えず即物的に動く光景は文字通り死せるobjetの無機質な運動に他ならず、そのあまりのエロくなさに朕は驚きを禁じ得ぬとともに、そこかしこに散見せらるる禍々しき心霊映像(異常に古い映像には十中八九幽霊が混じつてゐる)を観るにつけ朕のちんぼうは文字通り縮み上がつたのである。時間経過に伴うエロスの逓減は死とエロスの本質的連関から云へば大いなる矛盾と雖も、エロスとはフィルムを透過する光と影の戯れ以上の何かを心に映写するものである以上、現世から乖離した次元に存在する物体の滑稽な運動の、モザイク処理により更に増幅される滑稽さのなかに普遍的な美を見出しうるかと問はれゝば朕はノンと回答せざるを得ぬ。詰まるところわれわれは百年前のエロ動画で興奮することが出来ますか?と云ふ切実な問ひかけに対して、考えうる限り最悪の形で答えたのがこの無慚なオムニバス映像作品であると云へやう。と云ふか一本調子のうざいピアノと挿入字幕が延々流れる例の無声映画方式のうえ登場する女優がことごとく醜女(尻たたき学級の少女を除く)ゆえおおむね退屈であつた。唯一観る価値があるとすればラストの巨大なちんぼうのアニメーションである。あと「○起しないなんて信じられない! 何よ、役立たず!」と云ふ字幕になぜか異常な興奮をおぼゑた。あ、そう。★