母さん、あの麦わら帽子どこへ行ったのでしょうね
ごきげんよう、はてな坊やたち。すっかりごぶさたしてしまったが元気かね。いやー、このところ本業(こじき)の方が忙しくって。そんなことよりもこの間は悪かったね。ついカッとなってあんなこと(オムツをかぶって靖国参拝)をしてしまったが、反省しているのでまあ許せ。オヤオヤ、なんて顔をしているんだいマドモアゼル! 綺麗なドレスにそんな(ブサイクな)顔は似合わないぜ。この、わたくしのコギタナイハンケチでよければその涙と鼻水とヨダレを遠慮なく拭ってくれたまえ! あ、別に返さなくていいぞ、どっちにしろ汚いからな。
説明しよう。この男の名はジェントル三越。12匹ほどいるわたくしの人格のなかでいちばん気品も教養もある紳士なのだが、惜しいことに全裸。しかし本人は中世のイケイケ貴族風ファッションでバッチリ決まっていると信じ込んでいるので、ここはひとつ気づかないふりをしてやってほしい。
ところで、諸君に一度聞きたかったのだが、夏になると死にたくなりませんか? 自殺発生件数を季節別に見るとぜったい夏がいちばん多いような気がする。それも10さい〜80歳ぐらいまでの年齢層の自殺者が圧倒的に多いと思う。とかくこの世は住みにくい。世界は諸君が自由に生きることを妨げる。諸君も百姓の子孫らしく地面をほじくりながらつつましく生きていればよかったものを、柄にもなく人並みの快楽なんぞむさぼろうとするからそんな風になってしまったのだ。すべては諸君の心の問題である。ここで純粋に疑問なのだが、諸君らはよく海外とかに遊びに行ったりしているようだが、資金は一体なんなのだ!? こじき基金なんてのがあるんですか?? わたくしは海外はおろか国内も、強制的なものを除けば日帰りですらほとんど行ったことがないが、貧乏だからではない。行きたくないのである。行きたくないのは山々だが、わたくしだけ夏休みの間どこにも行かなかったという置いてけぼり感を食らうのがじつに腹立たしい。思い起こせば小学4年の夏。「●●に行ってきたお〜(ゲヴー)」と自慢する同級生を横目にわたくしは心のなかでひそかに誓っていたのです、これはもうブチギレるしかないと。ルサンチマるしかないと。ええい、こうなりゃいっそ人類に宣戦布告ダヨ〜ン。こうして、10さいにして人生に絶望したわたくしは、爾来「人類撲滅」「色即是空」「貧乳最高」のプラカードを心に掲げながら、これまでどうにか童貞を守り抜いてきたのです。
何が言いたいのかと言うと、毎月の給与明細の天引き額が高すぎるということと、使わない携帯電話の料金が馬鹿高いということです。あと銀行のATMの手数料も納得がいきません。おそらく血液型性格分類を本気で信じているようなボンクラがのさばるような国だからお上に舐められるのでしょうね。てきとうにエサでも与えておけば国民どもはおとなしくヨダレをたらして言うことを聞くであらう、と。なんという屈辱でしょうか。誇り高き大和貧民たるわたくしどもとしては断固抗議を致さねばなりません。いまこそ蜂起の時!
「一揆じゃ!」
「一揆じゃ!」
「沢村一樹じゃ!」
「北村一輝じゃ!」
「そりゃかずきじゃ!」
そうじゃそうじゃと気勢をあげる農民たちにわたくしは最後のアジテーションを浴びせる。
「いざともに放棄せよ貧民諸君! 血と汗と涙とウンコの染み付いた、この越中ふんどしを旗印として! あと希望者にはオモチャの銃を支給するので、それで自由に乱射なり自殺なりするといいナリよ!」
頬を赤く腫らしたわたくしが泣きながら帰宅すると、ダンボール箱一杯のにんにくが田舎の母から届いておりました。