ウール100%
「ウール100%(WOOL 100%)」(2005 日 富永まい監督)99分
こじき100% 1ねん1くみ いずみもとや
(あらすじ)
ゴミ屋敷に棲む梅と亀はガラクタを拾って集めるのが大好きななかよしババア姉妹。ある日、姉妹が拾得した赤い毛糸玉の先に、ボロボロの赤いセーターを着た女の子がついてきました。何度も自分のセーターを編みなおす少女を姉妹は「アミナオシ」と名づけて育てますが、凶暴なアミナオシは姉妹の大切なコレクションを次々に破壊し始める・・・
(かんそう)
「ゴミの国のアリス」とも形容すべきシュールなジャケットが秀逸。ゴミ屋敷のオシャレ汚いデザインもいい。岸田今日子と吉行和子のツーショットは犬神家の双子ババア(小梅・小竹)にも劣らぬインパクトがあり、一心不乱にガラクタを漁るババアの姿はじつに魅力的である。こじきにもいろいろあって、腐ったものを食べて腹を下すこじきもいれば、ゴミの山からかっこいいアイテムを探し出して再利用するのが上手なこじきもいるのだ。無用物から価値を引き出す確かな鑑識眼と創造力、そして一切の妥協を許さぬ貴族精神こそがこじき道の神髄であろう。
話は変わるが、妖怪アミナオシがエロいです。赤い毛糸で編み上げた自らのセーターを「ああ〜!!また編みなおしじゃ〜!!」と絶叫しながらほどいてまた編みなおす、という無限ループを繰り返し、編みなおしのたびに編みかけのセーターで半身を隠して作業をするのだが、編みかけのセーターの向こうはすっぽんぽんに近い状態であろうことが容易に想像され、エロスを煽ります。また、編み物好きに似合わずたいへん暴力的な性格で、うるさく鳴く鳩時計を回し蹴りで破壊したり、起き上がり小法師にイラついて両目を編み棒で突き刺したりと大暴れするのですが、ほつれたセーターの裾から覗くあらわな太腿がじつにエロエロ。それをクローズアップで捉えるキャメラアングルも変態的で、アミナオシが暴れるたびにいちいちパンツが見えていないかどうか一時停止で確認しないといけないので大変でした。
惜しいことにこの映画、後半で失速します。アミナオシがババア姉妹に髪を切られてブス化したことが最大の原因ですが、さらにアミナオシが姿を消してババアの回想シーンが続くのだが、いかんせんババアの少女時代がぜんぜんかわいくないため、非常に退屈なシーンになっています。ラストもまた中途半端。解釈の幅や余韻を生む中途半端さならまだしも、解釈を超える相応の感動がないため曖昧さへの逃避といった印象を受けます。アミナオシ=姉妹の牙城(自我)への闖入者=姉妹の記憶を解きほぐし編みなおす存在、みたいにしたかったのでしょうが、破壊と再生の関係式がちぐはぐでいまいち収束しきれていません。いっそのこと編みなおしじゃ〜〜を最後まで押し通してギャグ映画にするとよかったかも。作品のコンセプトとアミナオシのキャラクターが素晴らしいだけにもったいない。しかしまあ近年の邦画のなかでは着眼がユニークで、邦画特有の小汚さを利用して禍々しくもユーモラスなおとぎ話に仕立てたセンスは見事だと思います。唐突に挿入されるホラー・アニメーションも斬新でかっこよかった。その意味では、たいして観てもいない邦画を一律に貶すネクラこじきの皆さんや「かも○食堂」を観てよろこんでいる癒し系こじきの皆さん、はたまた情報収集に余念のないネットこじきの皆さんには意外と「ひろいもん」かも(笑)。もちろん、半裸で編み物をする少女が観たい変態さんにもオススメです(笑)。★1/2