無駄に漢字を使ふ會の發足に就て
【設立の趣旨及び目的】
若者の性の亂れが叫ばれて恒しい昨今、其れも然うだが寧ろ眞に憂ふ可きは日本語の亂れでは無いでせうか。外來語の氾濫する御時勢に在て日本語を取り卷く環境は嘗て無い程嚴しい物が御座居ますが、抑々日本語の墮落が始つたのは舊字舊假名遣ひを廢し常用漢字を導入せる戰後の謬つた日本語教育に迄遡り、翻て現代に眼を轉ずれば老若男女を問ず眼に餘る智性の缺落振り、自意識のみ肥大したる輩の蔓延する事夥しく公開日記等々に於る野糞同然の垂流思考、遂には何でもかでも「やばひ/可成やばひ」で濟ませる《ゆ●り世代》の登場に至つては只々唖然呆然、只管吃驚仰天する許りで御座居ます。豫てより斯樣な状況を憂ひて參つた小生は今日の吾國の國力の疲弊衰退に鑑み、日本語就中漢字文化の輕視こそ今日の國家的墮落を招きたる諸惡の根源と捉へ、斯かる事態を等閑に附せば愈々以て國家存亡の危機也と斯く懸念致す次第で御座居ます。此上は《美しい國日本》に相應しい眞の智識と教養を涵養し、日本語本來の美の復權延ては大和民族の喪れた尊嚴を囘復する事こそ國家百年の大計と心得、此處に《無駄に漢字を使ふ會》の設立竝びに僭越乍ら會長就任を勝手に宣言致す次第で御座居ます。
【無駄に漢字を使ふ會會則】
一、兎に角漢字を濫用する事。日常生活に於て全く必要性の無い難讀字(穿鑿、顰蹙、齷齪、矍鑠、馥郁、腧、盥の類)若は如何でも良ひ糞丁寧語(然樣で御座居ますか、誠に有難う御座居ます、宜敷御願申上ますの類)等を活用すれば尚效果的である。但、意味の良く解らぬ言葉を無闇矢鱈に使用すると卻て無智を暴露する結果と成る故、前提として其の語義を正確に把握した上で使用する事が重要である。況や日本語の範疇を大幅に逸脱したる見苦しき當字(夜露死苦、愛羅武勇の類)乃至漢字の表音文字特性に依存したる所謂萬葉變態假名の濫用に到ては以て他山の石と爲可し。
一、原則長文を旨とし句讀點の使用及び可讀性を高むる口語表現竝びに平假名表現(無用の送假名、讀假名を含む)の使用は此を最小限に留め常に可讀性を低下する樣努める事。已無く使用する場合は舊假名遣ひの濫用に依り此を相殺する事が望ましい。
一、外來語別ても片假名や羅馬字表現は日本語の外觀を著しく損ねるのみに非ず大和民族の智能低下を齎せし唾棄爲可き文化にて此を一切使用する事を禁ず。
一、漢字も外來語であり尚且當字では無いか(嗤)と云ふ屁に酷似した指摘は此を卻下する(嘲)。
【期待される效果】
巷に無駄な漢字を氾濫させる事に依り毛唐由來の輕薄文化を驅逐し國民全體の教養を高め諸外國に對する吾國文化の優位性を誇示する事が出來る。更に畫數の多き文字の濫用に依る思考の促進に伴ひ腦の活性化と痴呆防止效果が期待されると共に、專ら漢字變換等に要する無駄な打鍵數の増加に據る指或は腕の運動促進、筋肉増強等の健康増進效果が見込れる。
【豫想される弊害】
・無制限な漢字濫用に依る可讀性の低下は經濟效率を著しく阻害すると同時に識字難民の怨嗟の聲を招くであらう事は火を觀るより顯か爲れども輕佻浮薄を是とせし現在の日本文化の脆弱化を招きたる元凶が斯る省力と效率を優先せる經濟主義に存する事に謟ひの餘地無く、此樣な軟弱なる今日的趨勢に只管逆行せる反時代的精神こそ健全なる國家再建の要と思惟する。
・動もすれば智能低き者程闇雲に漢字を使ひたがる傾向が在る事は夙に指摘される所であり此迄も外來語の類は特定の似而非智識層の選民意識の助長に貢獻して來た經緯が有る爲、本會の眞意に拘らず一部勘違俗物主義の増長を招く虞が懸念されるやも知れぬ。然乍ら本會の目的は大和民族全體の智力を底上する事に在り、愚者と鋏は遣ひ樣、如何に低次元の輩と雖も煽てれば本國家事業推進の一助と成らう。
以上本會の發足に際し會長より一言御挨拶申上ますと共に、何卒本會の主旨と其の活動意義を御汲取戴き、會員諸賢の御協力を御願申上る次第で御座居ます。