幸福な食卓
「幸福な食卓」(2006 日 小松隆志監督/瀬尾まいこ原作)108分
「中原、お前の携帯何番?アドレスも教えといてくれる?」
「えっ、もってないよ」
「あのさ・・・中原って・・・結構かわいそうな家の子なの?」
エロ美神さくら 1ねん1くみ ふせあきら
「空中庭園」「紀子の食卓」など近年の家族崩壊ドラマにおいて関係性の崩壊と曖昧さは自明のものとなっているが、本作もまた家族の崩壊と個人的な悲劇をシンクロさせることによって家族のありようとかを曖昧に問いかけてみせた作品である。散漫で希薄な物語と何を言いたいのかよくわからん曖昧さには安易な肯定や否定を避ける効果があり、邦画の長所でもあり短所でもある。その曖昧さの美学を保ったまま物語は「お望みの結末」へと急転直下なだれこむ。一般的にベタと呼ばれもするこの予測可能な結末を凡庸ととるか様式美ととるかで評価が分かれるところだがわたくしは後者としてとらえた(人が死ぬというのは映画においてもっとも大切な要素であります)。ただ残念ながら肝心のラストシーンを音楽が全てブチ壊していました。音楽のせいで「い○いろあった○ど前を○いて歩○ていこう(笑)」という凡庸さむきだしの《メッセージ》に堕してしまった。てか《くるみ》ってなんのこっちゃ(笑)。悲劇をあっけらかんと開き直ってみせ、喪の儀式を壮大な茶番に引き摺り下ろすこうした下品な音楽の使い方は間違いなくテレビドラマの悪影響なのだろうが、ここまで押し付けがましいと逆に笑える。本作に唯一共感可能な素地があるとすればそれはヒロインを演じた北乃奇異の顔面であらう。彼女が「えっ?」と言うたびにそのねぼけた顔面に頭突きをかましてあげたくなったのはわたくしだけではあるまい(笑)。★1/2