The Revenge of The Radioactive Begger
インターネットの急速な普及により共有可能な情報の質と量が平準化された現在、情報リテラシーの低さは個人の努力不足ということになっています。従ってこれから述べることを信用するかどうかは自己責任ということでお願いしたいのだが、その前にひとつ皆さんに質問です。どうやったら皆さんのようなきもいスピリチュアル信者になれるんですか? 秘訣があったら教えてください!(笑)
信者 「秘訣などというものはございません。わたくしどもはデフォルトで既にきもちわるいのです。それに《きもちわるい》はわたくしどもにとって極上のホメコトバでございます。なぜならわたくしどもは超マエムキですから、いかなる誹謗中傷もすべてポヂチブに解釈してごらんにいれます(笑)」
あー。すみません、質問は失敗でした。なかったことにしてください(笑)。
無形の精神世界に対する信仰というものはアニミズムに端を発し、生や死に対する根源的な不安・恐怖を解消する緩衝装置として機能してきました。このような不安は人類にとって普遍的なものだったと見え、世界中のあちこちに似たり寄ったりの信仰が存在しています。世界各国の宗教の教義が基本的にどれも類型なのは、その発生源が同一だからでしょう。古代人の発明したこの信仰のプロトタイプは、様々な現世的利益と結びつくことによって、より強固な信仰形態を形成していきます。これが宗教です。もともとわたくしどもは大層な目的をもって生きているわけではありません。それが宗教を通じて積極的に現世と来世をデザインし、わたくしどものライフスタイルをプロデュースする方向へと変わっていったのです。まあこんなことを言ってはなんですが、人生に対する立派な目的をお持ちの方というのはほとんどがタチの悪い思想にカブレテいらっしゃいます(笑)。こうして宗教は、幾多の時代の変遷を経て、現在のような様々な形態への分化、進化を遂げました。そのひとつが、うらないやスピリチュアルといった現代のオカルトです。精神世界を扱うテレビ番組がゴールデン枠で堂々と放送されている現在、とりわけ、ホソキバ・エバーラ・ヨイトマケというスピリチュアル御三家の活躍により、かつて一部の狂信的なヲタクの信仰対象に過ぎなかったスピリチュアル世界は、いまやわれわれの日常に着実に浸透しつつあります。では、このような時代の趨勢によってわれわれの精神的ステージは確実に上がってるはずなのに、世の中が一向によくならないのどういったわけでしょうか。実を申しますと、わたくしが念力で皆さんの善意のスピリットをねじまげているせいです。邪魔をしてたいへん申し訳ありません(笑)。
しかしわたくしごときがいくらがんばっても皆さんには勝てません。スピリチュアルを始め、宗教の腹部にはオカルトという非常にぶあつい皮下脂肪があり、あらゆる論理的な攻撃を吸収することができます。証明不能のオカルトを逆手に取るのが宗教の常套手段。無形の闇に言葉を与えて説明した気になっていますが、所詮オカルトの上に成り立つ虚構のシステム。問題を解決できないばかりか不幸を拡散しつづける知性を装った反知性に他なりません。嬉々としてペテンを教授し享受するこじきとこじきの関係。宗教とはそういうものです。
さらに困ったことに、このような共生関係を短絡的に否定することはできないのです。論理的に言って神や霊界は存在しないのですが、それらをオカルトやペテンと名づけて退けてしまうとおかしなことになってしまいます。宗教的信念を論拠とした様々な社会制度は一気に崩壊を迎えるでしょう。信仰を捨てれば虚無しか残りません。それに人間、一度オカルティックにひねくれるとなかなか元に戻りませんので、下手に脱出させるとトラウマだらけの廃人になってしまいます。ですから信じたまま死んだ方が幸せなのかもしれません。本当はわたくしのような不信心者こそ真に救いが必要ではないかと思うのですが、自業自得なんでしかたありません。神は存在します。あの世も存在します。地獄、極楽、輪廻転生なんでもありです。魂の数に物理的限界はありません。霊魂は無数に空中を浮遊しており、われわれは空気といっしょにそれらを呼吸しています。現在あなたが不幸なのはキツネやご先祖様のタタリなので、いろんな神社やお墓に参ってご機嫌をとりましょう。悪いことをすると当然地獄に堕ちます。目に見えない霊的ななにかが四六時中監視しているので悪いことはできません。ご飯を食べているときもうんこをしているときも見られてるのかと思うと不安でたまりませんが、がまんしましょう。
とまあ、こんなことを言うと気の触れた宗教ヲタがマッテマシタと登場し、例のヘリクツをぶちまけるのは目に見えています。めんどくさいのでわたくしは彼らの主張を無条件で認めてあげることにしております。こんな風に。
うんうん、なるほど、まったくそのとおりですね。あなたのおっしゃることはいちいちもっともだと思います。ただまあ、そんなくっさい口で言われてもなあ(笑)。EINDE