犬神の悪霊(たたり)
「犬神の悪霊(たたり)」(1977 日 伊藤俊也監督)103分
「♪月夜の晩は〜モグラもくもく墓を掘れ〜カラスかあかあ山焼けろ〜明日天気になあれ」
「おまえはこの家のすべてを奪うた。奪うてしもうた。呪われた男じゃおまえは! はよーーーう、イネッ!はよういなんとシヌぞ!」
いやー、これは楽しい。日本的陰惨美とギャグすれすれ(あるいはギャグそのもの)のギミックが融合した犬神様もビックリの怪作。「エクソシスト」「オーメン」を凌駕する日本初の本格オカルトという触れ込みだったようですが、確かにこれは軽々と凌駕していますね。毛唐の悪魔憑きとはまったく違う陰湿な迫力と独特の面白さに満ちています。冒頭から裸の女や走る犬のスローモーションが挿入されて美しいのですが、予想を裏切るギャグのつるべうちで悶絶しました。犬神憑きとは日本の田舎の土俗信仰のひとつで、精神病などの理不尽な現実に耐えられない人々がオカルトに原因を求めたものだったと思いますが、村人たちの笑える死にざまもさることながら、一見清楚な泉じゅんがとつぜん錯乱したり、田舎者に握り飯で全身を凌辱されたりと、狂気とエロスのはざまで狂おしく悶える姿に激しく興奮します。また少女に憑依した悪霊(?)のエキセントリックな台詞回しとアクロバティックな動きが素晴らしく、犬神少女が赤いおべべの裾からはだけた生足もあらわに跳んだり跳ねたりする様は、長谷川真砂美たんのロリ度とあいまってすばらしく萌えます(一瞬だけ毛脛茫々になる少女の生足に刮目せよ!)。「女囚さそり」シリーズの伊藤俊也監督だけあって虐待と復讐の構図が明瞭に打ち出され、また祟りや呪いといった万能の解釈装置で動いているので物語としては非常にわかりやすいのですが、映画そのものが犬神に憑かれたような狂暴なパワーに満ちているようです。≪なんだかわからんもの≫に映画が蹂躙されるさまは痛快そのものだ。★★