時をかける少女
「時をかける少女」(1983 日 大林宣彦監督/筒井康隆原作)104分
映像の暴力 1ねん1くみ みやねせいじ
いやはや、これはヤラレタ(笑)。「ねらわれた学園」に続き、これまた暴力的なまでに摩訶不思議な映像体験。正直こんなけったいな映画とは知らなかったので、終始ニヤニヤしながら観ることができた。コマ飛ばしや部分彩色といったおなじみの映像加工、地震発生時の凶悪すぎる人形の動きなどカッコいいシーンのなかに、真面目とも悪ふざけともつかない逸脱表現が平然と混在している。あらかじめ破綻したような物語の進行に伴い明らかに茶番度が増していくのだが、とりわけ脈絡なく始まるラストのミュージカルパートにおいて本作の映画的カタストロフは頂点に達す。原田知世のブスカワ大根音痴ぶりを逆手に取った見事な演出というべきで、映画的文脈をあえて破壊することで、原田の可憐だが音程の狂った歌声とぎこちない挙動を画面に違和感なく溶け込ませているのだ。また、瓦屋根や土塀、石段、格子戸といった前時代性を残す尾道の「どこにも存在しない」ノスタルジックな光景がこれらの狂った素材をやわらかく受け止めている事実にも着目したい。松任谷正隆による抒情的な音楽と大林作曲の「愛のため息」もよかった。というわけで非常に楽しかったのだが、ひょっとしてわたくしは大林のオッサンが好きなのだろうか。まさかね(笑)。★1/2