今日のインタヴュー
「失礼ですが、町いちばんのこじきというのはあなたですか?」
「いかにも、わたくしが町いちばんのこじきだが。いったい何を恵んでくれるのかね?」
「おお、さっそく物乞いとは。噂にたがわぬこじきぶりだ。申し遅れました、わたくし週刊『プレイぼうや』編集部のちんぼうじろうと申します。このたび弊誌でこじき特集を組むことになり、ついては町でいちばんと評判のこじきの方にぜひお話をうかがいたいと思いまして。お礼はキャッシュで100円にていかがでしょうか」
「うむ、ひきうけた」
「ご協力ありがとうございます。ところで、さきほどからものすごいキョトつきぶりですが、何を探してらっしゃるのですか?」
「こじきたるもの常に周囲にアンテナをはりめぐらし、めぼしい情報をキャッチするよう努めなければなりません。これによりファーストフード店やレストランのゴミ出しのタイミングを把握するのみならず、車にはねられる危険性を回避したり、心ない投石や野良犬の襲撃に備えることができます。また、このように挙動不審を積極的に実演し、みずからのこじき性を周囲にアピールすることで、より多くのこじきチャンスを引き寄せることができるのです」
「なるほど、じつに理にかなったご意見です。しかし偏見かもしれませんが、こじきのみなさんはナマケモノのようにじっと待ってらっしゃるものだとばかり思っていました」
「橋のたもとにゴザを敷いて空き缶を置き、道行く人にケツを向けて寝ていると?(笑)時代遅れのこじき観ですね。優秀なこじきほどみずからの欲望に忠実です。こじきは死ぬか生きるかのサバイバルゲーム。確固たる目的意識と冷徹な判断力がなければ勝ち抜くことは不可能です。われわれはこれを《こじき力》と呼んでいます」
「ははあ、これは深い。最後に、今後の抱負などをお聞かせいただけますか」
「いま最も興味を持っているのが異分野とのコラボレーションです。わたくしはこじきとアートの融合を目指したこじきアートという概念を提唱しています。こじきは社会に寄生するだけの非生産的行為と思われがちですが、不用品の再利用などこれまでリサイクル活動に積極的に貢献してきました。さらに見た目の美しさや楽しさを演出することにより、街角にささやかな癒しの空間を提供していきたいと思っています。職能集団としての自覚のもと、持続可能な社会の発展を見据え、アートとエコロジー双方の観点からフィランソロピーを実現していく。これが今後の正しいこじき社会のあり方だと思いますね」
「なるほど、こじきの未来は明るい、と。今日は本当に貴重なお話をありがとうございました。ほらよ(チャリン)」
「おありがとうございー」
《こじき十箇条》
・質より量
・腐っても食える
・タダより安いものはない
・貧乏は敵、贅沢は素敵
・恥を捨てよモノを拾え
・決して悪びれてはならない
・不平不満を言うな
・感謝こそ最大の美徳
・ひたすら謙虚にへりくだる
・コビヘツライのキモチを忘れずに