転校生
「あれ、時々かたちが変わるのね」
「あれって?」
「おしっこの出るところよ」
「バカ、そんなもんいじくりまわすんじゃねえよ、おまえ」
「だって、おしっこのあと紙でふいたらなんとなく形が変わったの」
「おまえ、紙でなんかふくやつがあるかよ。あんなもんはな、二、三べん振り回してしずくを切ったらそのまましまえばいいんだよ」
「転校生」(1982 日 大林宣彦監督/山中恒原作『おれがあいつであいつがおれで』)112分
(あらすじ)
幼なじみの斉藤一夫と斉藤一美は神社の石段から転げ落ち、頭を打つ。気がついたらなぜか心が入れ替わっていた。
(かんそう)
おかまを地で行く尾美としのりとやんちゃの似合う小林聡美のかけあいがみどころ。設定上もっとえげつない描写もできたはずだが、ギリギリ下品にならない程度の慎ましやかなエロスがほほえましい。小林聡美の生乳とパンツを観放題なのはありがたいのかどうかよくわかりません。人格が入れ替わった原因が科学的に説明できないとかなぜ医者に行かないのかとかいろいろおかしな点もあるが、尾道の古風な町並がこれらの狂った素材をやわらかく受け止めている事実にも注目したい。シューマンのトロイメライで始まるモノクロのオープニングと、バッハのG線上のアリアを使った家出シーンが印象的。あと二回も石段から転げ落ちてよく死なないものだと思った。★