ラスト・ホラー・ムービー
「ラスト・ホラー・ムービー(THE LAST HORROR MOVIE)」(2003 英 ジュリアン・リチャーズ監督)76分
「恐怖の殺人ビデオ」というオムニバスが昔あったが、映画の内容が現実(観客)にリンクするというじつに古めかしい趣向のさくひん。きちがいがたまたまビデオ屋でみつけた「ラスト・ホラー・ムービー」というしょうもない映画に本物の殺人を上書き録画して戻しておいた、という苦しい設定である。しかもそこに登場するのはこれまた珍しくもないパトリック・ベイトマン風のおしゃべりサイコで、自己の殺人哲学をキャメラに向かってとうとうと語る。ホラーにおける殺人はおしなべて理不尽であるべきで、きちがいが問答無用でぶっ殺す方が圧倒的に楽しいのだが、その意味でこの手の理屈っぽいきちがいは本来邪道であり、動機やらがあまりに合理的に説明されるとそりゃまあそうでしょうと言う話になる。ただまあ致命的なのはこの作品のソフトがDVDで出てしまっているという事実。字幕や吹き替えはもちろん、メイキングや予告編などの映像特典まで収録されているし、ご丁寧にジャケにきちがいの顔までプリントされとる。これでは手の込んだ茶番どころかコケオドシですらない。いっそVHSにあやしい手製のジャケットを着せてYahoo!オークションに1円で出品すればよいのだ。ξ