パンズ・ラビリンス
「パンズ・ラビリンス(EL LABERINTO DEL FAUNO/PAN'S LABYRINTH)」(2006 墨・西・米 ギレルモ・デル・トロ監督)119分
パンツ・ラビリンス 1ねん1くみ ジョーやまなか
ダーク・ファンタジーの傑作との評判を頼んでレンタルを待たずに購入。わが国に劣らず暗い国民性を持つスペインが舞台の作品らしく全体的に暗澹たるトーンの作品であった。「子供は何でも知っている。」のような幼年残酷ファンタジーを期待すると肩透かしを食らうかもしれない。ファンタジーを妄想全開型と現実即応型に分類するならば本作は後者に相当する。キショイヤギのバケモノ(牧神)やゲロガエル、のっぺらぼうの子食いなど、お子様系のファンタジーとは一線を画すグロいビジュアル、それらが少女の悲惨な現実からの逃避願望を反映したものであることを察知し、観客は興奮します。そこへさらに追い討ちをかける残酷な現実により妄想を加速させるオフェリアたんはたいへん可憐で、オフェリア役のイバナ・バケロたん*1の名前もすごいが、とりわけシュミーズ姿で泥の中を這いずるシーンやマンドラゴラを飼育するためパンツが見えそうな格好でベッドの下にもぐりこむシーンは思わず固唾をのむほどです。だが、本作は明らかに現実の暗さの描写に比重があるためおいそれと妄想に耽溺することを許さない。エロ目線で観ていた観客は否応なく現実に引き戻され、ちんこをにぎる手をゆるめざるを得ないのである。暗い現実を逃れ出た少女のパンツに導かれ、エロスの迷宮をさまようわたくしどもを待ち受けるのは直径3.5cm(最大)のギロチン穴に他ならない。血とエロスは不可分の関係にあるが、本作のそれはわたくしどもが期待する経血や処女血といった抽象的な血ではなく、実存的死へ向かう少女の血で贖われたエロスだと言えよう。なんとも不純なファンタジーである。★
*1:「機械じかけの小児病棟」「スパニッシュホラープロジェクト クリスマス・テイル」ほか