妖怪大戦争
「妖怪大戦争」(1968 日 黒田義之監督)79分
お話は心底どうでもいいのだが、カッパや油すまし、海坊主やぬっぺっぽうなど日本を代表するラヴリーな妖怪たちが勢ぞろい。わたくしどものきぐるみコンプレックスをくすぐるいかがわしい魅力と、ロシア映画「妖婆・死棺の呪い」にも匹敵する脱力感満点のスペクタクルが堪能できます。オープニングの湿地にぼーっと現れる集合ショットやクライマックスの戦争と称して無表情のきぐるみがじゃれあうシーンなんかマジ失禁ものですね。唐傘おばけを仰角でとらえたセクシャルなショットと、唐傘の足にしがみつく油すましのうつろなまなざしはスカートの中を覗くヤク中の変態を想起させます。日本の妖怪のきもかわいいルックスはユーモラスでじつに微笑ましいが、それに比べてバビロニアの妖怪ダイモンのブサイクなこと。いきって髑髏のベルトなんぞしておりますがぜんぜんダサいです。本作の難点を挙げるとすれば妖怪以外のシーンがひどく退屈。どう見ても妖怪よりかわいくない人間が映画村まるだしのセットではしゃいでもうざいだけである。また、安易に妖怪に人間語をしゃべらせたり人間との共生を強調したりするのもよくない。異界のエニグマをまとって淡々と任務に従事するきぐるみの妖怪にこそわたくしどもは萌えるのである。念のため、ここでわたくしが申し上げている《きぐるみ》とは、あくまできぐるみ幻想を体現する憧憬の対象としてのきぐるみであり、汗をかいて異臭を放っている中の人は含まれておりません。★