腑抜けども、悲しみの愛を見せろ
「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」(2007 日 吉田大八監督/本谷有希子原作)112分
すーなのこどもはありじごく じんじろりん
かーぜのこどもはたけじごく びゅーびゅーびゅー
ほーしのこどもはおうじさま きんきらきんのきーらきらー
あぶらっきょうのぷーしゃいなー
げろげろりん げーろげろ
げろげろりんのげろげろげ
げーろげろ げろげろげ
げ
(あらすじ)
美しい田園風景を舞台にドイナカの一家の崩壊を描く。
(かんそう)
「真夜中の少女たち」の佐津川愛美たむがブサイクな姉にイジメたおされる暗い美少女の役と聞き、矢も盾もたまらず購入。うーむ、佐津川愛美たむ激萌え。佐津川愛美たむがいびられるたびにエロティクな感動がへろへろと背筋を駆けあがり、なかんずく「湯船から出る瞬間を激写しようと待ち構えるブサイクな姉の熱湯攻めに耐えるシーン」と「ジジババの前でブサイクな姉を賛美する歌(浦島太郎のメロディで)を歌わされるシーン」に嗜虐的な興奮を禁じ得ませんでした。陰気で健気な根暗の妹を演じる一方でアホな姉をホラー漫画化するという陰険さもすばらしいです。この子にはぜひ今後もいろんな汚れ役に挑戦してほしいものですね。また、緊迫したシーンでの永作姐さんのずれた言動は笑えました。なにより『人形呪い歌』をこんなに楽しそうに歌えるのは永作姐さん以外にいないのではないでしょうか。感動しました。あと主演女優がこれ以上ないというぐらいの見苦しさを発揮して見苦しい役を演じているのでまじで不愉快でした。さて、「空中庭園」「紀子の食卓」など近年の日本映画には家庭崩壊を描いたドラマの秀作が多いと思うのですが、特徴的なのは家族関係の終焉とともに再生ではなく変容(トランスフォーム)が描かれているということです。反目しながらも寄生しあう本作の姉妹の姿に観客は「水よりも濃い」血の宿命とグロテスクな愛の形を見ることでしょう。じじつ血縁関係のない兄は死に、人の良い不幸な兄嫁は不幸なまま発狂(たぶん人形呪い歌を歌いながら)するのですから。この抽象的なタイトルはそこらへんを遠まわしに表現しているような気がしました。チャットモンチーのエンディング曲も複雑な余韻の本作にはまっていてよかった。★1/2