野性の証明
- 出版社/メーカー: 角川ヘラルド映画
- 発売日: 2006/10/20
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お父さん、こわいよ なにか来るよ 大勢でお父さんを殺しにくるよ
風道部落・アックス・マサカー 1ねん1くみ いわきこう一
(あらすじ)
元自衛隊特殊工作隊員の味沢味平(高倉けん)は保険外交員をしながら、養女の頼子(薬師丸ひろ子)とつつましく暮らしていた。東北の寒村で起きた虐殺事件の唯一の生き残りである頼子は、精神的ショックから事件に関する一切の記憶を失っていた(選択性健忘症)が、それとひきかえに異常な予知能力(直感像)を示し始める。同時に事件現場で見た青い服の男の記憶を徐々に取り戻しつつあった。
(かんそう)
とにかくもう死体の数が半端ではない。やくざ・きちがい・暴走族・警察・自衛隊が入り乱れ、ものすごい量の死体の山が築かれる。とりわけすばらしいのは風道部落における村人の虐殺シーン。手オノ片手に暴れまわるきちがいと悲鳴をあげながら逃げ惑うかわいらしい村人を捉えたこのシーンは、勇壮な音楽と美しいスローモーション、そして派手に手が飛び首が飛ぶ描写のグロさとあいまって、日本映画屈指の鮮烈なジェノサイドに仕上がっている。きちがいの正体が腐った野菜を食べて脳をやられた頼子の父親だったというのも泣かせますね。それにしても薬師丸ひろ子がかわいい。農村ルックに身を包み「おとっちゃんころさねでけれ」と懇願する姿や、事件のあと記憶を失ったままド貧乏な親戚のうちにひきとられていくシーンのうつろな表情。つぶれた誕生日ケーキを前に泣き伏す一方、あらぬ方角をみつめて指をさし不吉な予言を口走ったり、記憶がよみがえり味沢への憎悪をあらわにするかと思えば、考えうる限りもっとも最悪のタイミングで「おとーさーん」と飛び出し射殺されるという常軌を逸したツンデレぶり。ぶっちゃけ萌え萌えです。また、あからさまに頼子に拒絶されながらも身を挺して彼女を守ろうとする味平の姿がとてもいじらしく、死んだ頼子を背負ったまま巨大な敵に敢然と立ち向かうラストの勇姿に、ハードにしてナンセンスな男の生きざまを見ました。きわめて荒唐無稽なプロットながら、非情と叙情のきわどいバランスを保ったあなどりがたい逸品と言えるでしょう。★1/2