Eat My Meat
ラフィング・カウ(The Laughing Cow)というチーズのブランドがある。作っているのはフランスのメーカーだったと思うが、文字通り笑っている牛が商標である(画像参照)。スーパーとかによく売っているが、非常にインパクトのあるキャラクターで、一度みたらまず忘れない。この手の、食材そのものが宣伝キャラ・売り込み役をつとめるパターンはけっこうみかける。ラフィング・カウは乳を提供しているだけだが、食肉コーナーや広告で牛や豚の四足動物、魚、鶏などがイキイキとみずからをアピールしている場面に出くわすことは珍しくない。で、こいつらに大抵共通しているのが、はちきれんばかりの笑顔である。恨めしそうにこちらをジッと見ている絵はまずありえない。ラフィング・カウにいたっては商品を模したイヤリングをつけるほどのお茶目ぶりだ。で、この邪気のない笑顔がかえってコワイ。ありえないからである。人間の食文化をあざ笑う悪意のセルフパロディのように思えてくる。一種の自虐商法とでもいうか、むしろシュール。狂った笑顔そのもので「おいしいよ!」「Hey, Eat Me!」と迫る動物たち。動物たちのニヤケ顔に釣られて彼らの死体を買い込む人間たち。やはりここにもサディズムとマゾヒズムの構造が歴然と存在することに私は気づいたのであった。