はぐゎ
ビジネスメールの「文」の途中でやたら改行する人がいるのだが、なんでだろう。ネタやいやがらせではなくなぜか素で、文の途中に細かく「改行コード」を入れてくるのだ。断絶すべきでないところで意味の断絶が起こり、読みにくいことこのうえない。
ここでいう文というのは、一文のことである。
「ここでいう文というのは、一文のことである。」を例にとれば、「ここで」から「である。」までが一文である。
したがって、文の途中で改行するというのは、たとえばこれを
「ここでいう文というのは、
一文のことである。」
とする行為を指す。
確かに大昔は全角35文字、半角70文字あたりで改行コードを挿入するという感じのメールマナーが存在していた。理由は諸説(サーバエラーが起こりやすいとかなんとかかんとか)あってよくわからない。だがこれはインターネットの歴史でいえば古墳時代ぐらいの話。とうの昔に死に絶えている。
そうではなく、現代においてもなおビジネスメールのマナーと称して「適当に改行する」という表現を見かけるのだが、この「改行する」のニュアンスが曲者なのである。
改行するのは別にかまわない。意味のある改行でありさえすれば、だ。
そうではなく、まるで一行の文字数制限があるかのごとく、わざわざ文の途中に改行コードを入れて物理的に文を分断する行為の意味が不明なのである。
メールを読みやすくするコツのひとつとして「一文を短くする」ということはあるが、これは物理的に文面を縦長にせよという意味ではない。
この謎の改行を行う人の気持ちをむりやり想像するに、改行する理由が「横長だと読みにくいから」だったとしよう。
仮にそいつがパソコン等のワイドディスプレイでものすごく横長のプレビューペインを使ってなおかつものすごく横長のだらだらした文を読んでいるのだとすれば、ディスプレイの端から端までの視線の横移動がなんども生じるのでそれは確かに読みにくいだろう。(ただいまの一文は読みにくかったはずだ。)
だが読みにくい原因は、その横長の文を書いたやつがへたくそなだけではなく、おまえがそのようにビューを設定しているからである。パソコンにしろスマホにしろブラウザにしろメールソフトにしろ、変なhtmlで作成されていない限り、画面上の自動折り返し機能が働く。それでも読みにくいと思うのであれば、おまえが画面の横幅を調整すればよいだけである。おまえは青空文庫で昔の作品を読むときにも横長で読みにくいなどと文句を並べるのだろうか。
逆にスマホなどの縦長(横幅が制限されている)画面では、自動折り返しと無意味な改行コードが混在することによって、さらに断絶が起こりまくる結果になる。仮にその断絶だらけのメール文面を、一行の文字数と行数が固定されている400字詰めの原稿用紙(20字×20行)に移し替えてみるがよい。ポエムでもないのに文がコマ切れになり、その気持ち悪さはポエムに比肩、あるいはそれをはるかに凌駕するレベルになる。別に出版するわけじゃないしとか、文字数上限が指定されているわけでもないのだからいいじゃないか、とか言わないでくださいめんどくさい。原稿用紙というのはあくまできもちわるさを想像してもらうために例示しただけです。
ここまで言ってもわからない人のために、最後にこうしたほうがいいと思うルールをまとめておこう。
文の途中で無意味な「改行コード」を挿入してはいけない。読む側のストレスになるだけ。メールソフトの「一定の文字数に達したら改行コードを自動挿入する機能」を使うなどあほすぎて論外。
「改行コード」を挿入するタイミングは、「文(センテンス)」の末尾(すなわち句点の後)と「段落(パラグラフ)」の末尾(すなわち文の集合体であるところの段落における最後の文の句点の後)が原則。
例外的に、一文が長くならざるを得ないときは読点で改行することもやむを得ないが、そもそも一文を長くしなければいい話。
さらに言えば、段落とは「意味のまとまり」を指すものであり、段落が複数あれば論理の展開があることを示すはず。したがって、段落冒頭の字下げが一般的ではないメールにおいては、段落であることがわかるよう、段落間に空白の一行を置いて区別するべきであろう。
文中にわけのわからない改行コードを挿入するひまがあるのであれば、上記に意識を使った方がよほど有意義ではないだろうか。この記事がそうなっていないではないか、とかめんどくさいことは言わないでください。
ビジネスメールに関していえば、
・htmlモードをデフォルトにしている人からの返信メールにおける行間の空きすぎる現象(自動的に行間に改行コードが挿入されていることも)→読みづらいんじゃ。
・引用符(>やタブ)の使用をデフォルトにしている人との往復メールにおいて引用符が量産されていく現象(>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>)→読みづらいんじゃ。
も、文の途中の改行とおなじぐらいうっとうしいのだが、それはまた別の話。