時の支配者
「時の支配者(LES MAITRE DU TEMPS)」(1982 仏 ルネ・ラルー監督/ステファン・ウル原作)
「ペルディド星の孤児は死んだ」「死んで永遠の世界に行ったのさ」
「ファンタスティック・プラネット」のルネ・ラルー(監督)&ステファン・ウル(原作)コンビによるSFアニメ作品。決裂したローラン・トポールのキモかわいい絵柄とは趣の異なる、アメコミ風の不気味さが横溢している。まず人間以外のキャラクターがすばらしい。犬っぽいキリンのようなヘンテコな動物の生態、顔のない天使のような「名も顔もない思想だけの化け物」。そしてきわめつきはハスの妖精。こいつらは他者の思考を臭気として感知するのである。
「ここはなんだか臭いな」
「心の窓を閉じるんだ」
「もし君があらゆる思想に背き、自分自身を激しく憎み否定するなら、やつらを滅ぼす可能性が少しだけある。だけど自分も滅びるよ」
なんでしょう、この示唆に満ちた台詞は。こんな調子の言葉がかわいらしいハスの妖精たちから飛び出すのである。一方人間のキャラがグロいまでにリアルというかブサイクで、あらためて人間ってブサイクだなあと思った。たぶん犬や猫に陰で笑われているんじゃないかな。話の展開は最初やや退屈気味かと思われたが、クライマックスへ向けての盛り上げが素晴らしくいい。どうしようもない悪人に見えたマトン王子やハスの妖精たちの台詞がまた泣かせる。遠ざかる時の支配者の植民地、ファンタジックなエンディングテーマ・・・。こういう作品こそ見ごたえのあるSFだと思うのです。★★1/2
「変だな。参加者は少ないのに、大勢の悲しみを感じる」「僕もだよ」「どこから来るのかな」「僕の心からだよ、ユーラ。あの老人のことが大好きだったんだ」ズームアウトする光景。二つの半球を合わせた物体と、その周囲を回る光の立方体が映し出される。時の支配者の植民地。