大人は判ってくれない
「大人は判ってくれない(LES QUATRE CENTS COUPS)」(1959 仏 フランソワ・トリュフォー監督)
まずこの甘ったれた邦題にカチンときたのですが、どうやら日本人が勝手につけたものらしいのでそこは大人しく目をつぶりました。で、どんな粘着私怨ガキの恨みごとが聞けるかとワクワクしていたのですが、トリュフォーらしく実に平坦きわまるのっぺり演出で、残念ながら最初から最後までぜんぜん盛り上がりませんでした。ともかく主人公の少年の言動にさっぱり共感できないのが致命的だったようです。そもそも私は精神年齢が低いせいか、不良の気持ちも優等生の気持ちも、まして普通の子の気持ちもよくわからないのです。まあどうせ判らないのはお互い様なんですが。それにしてもこの映画の登場人物たちはつまらないことでたやすく罵り合っていてじつに醜い。なんでみんなあんなにプンスカ怒っているのだろうか。ストレス社会の弊害としか思えないですね。もちろん大人が汚いからと言って子供が純粋であろうはずもなく、この作品の少年もとんでもない悪ガキである。ヴィターリー・カネフスキー監督の傑作「動くな、死ね、甦れ!」のガーリヤちゃんのような守護天使がついていたら少年も更生できたんでしょうけど、最後までいまいちかわいげのない子供でしたね。悪い子はケンペーくんに処刑されますよ。わ、そんな恨めしそうな目で見ないでください。というわけで申し訳ありませんが、この映画のどこに褒めるところがあるのかまるで判りませんでした。あ、ひとつあった。遠心力で人間が貼りついてぐるぐる回るあの狂暴な遊具、あれはすごいねえ。あれ欲しい。★