灰の記憶
「灰の記憶(THE GREY ZONE)」(2001 米 ティム・ブレイク・ネルソン監督)
まったくもって気分が悪いですね。やはり人類など一刻も早く絶滅すべきであると思い知らされます。これを観た人は捕虜になったユダヤ人がハダカになっているシーンやミラ・ソルヴィーノが拷問受けているシーンでしっかり興奮していることと思いますが、まったくもって最低だと思います。脳より先にちんこで思考するなんてさすがですね。ぼくには真似のできない芸当です。で、映画としてはあまり面白くありません。そもそも若いアメリカの人がこの映画を作る必然性はどこにあるのでしょうか。たまたま生き延びた少女になぜアソコまで執着するのかも理解できませんね。むしろ別の意味を勘ぐってしまいますがどうでしょう。と思ったのですが、この作品のキモはラストなのである。なんというシュールで恐ろしいナレーションなのでしょう。本作に対する私の評価は一気に上がりました。★
『暴動が起きて、焼却炉の半分が壊れ、私たちは残った炉に入れられた。私はすぐに燃え出した。激しく焼けた体からは黒い煙が立ち昇り、みんなの煙と混ざり合った。それから残った者は、灰になるまで焼かれてホウキではいて集められ、川へ運ばれていった。そして最後に、わずかに残った灰が、空中に舞い上がり、移動し、新しい別の作業場に漂い続ける。灰色の細かい粉となって、人々の靴や顔につき、吸い込まれて肺の中まで届く。みんなはその灰に慣れていく。そのうちに咳は出なくなり、灰を振り払うこともしなくなる。そうなったら、人々は動くだけ。息をして、ただ動くだけ。焼却炉の中では、誰もがみんなまだ生きている。こうしてこの作業は、続いていく。』