パピヨンの贈りもの
「花も人間と同じだ。オスとメスがいる。でも動けないから」
「愛し合えない?」
「そうとも言える。そこで蝶が雄花の花粉を取って、雌花に運んでやるんだ」
「郵便屋さんね」
「ラブレター専門だがね」
「パピヨンの贈りもの(LE PAPILLON)」(2002 仏 フィリップ・ミュイル監督)
大自然の治癒力と少女の心的変容という、変態のフランス人が得意とする題材だけあって非常にキュートな作品です。ハリウッド型思考に汚染されつつある近年のフランス映画界にもまだこんな作品を撮る底力があったんですね。ジジイの脳裏に<誘拐>の二文字が浮かばなかったはずはないのですが、そこは変態の宝庫フランス、なにくわぬ顔で幼女の一挙一動に過密着しつつ、ジジイとのふざけたやりとりに照準を合わせているので観る側もさほど共犯意識を抱かずにいられるという工夫がなされています。とまあそんなこととは関係なく、自然の偉大さと幼年のイノセンスの前にはいかなる悪意も無力だと思い知らされる作品です。某M崎監督がこのテーマに執着しつづける気持ちも分かるような気がしますね。ところで、ジジイと幼女という組み合わせは「太陽に灼かれて」「陽だまりの庭で」「黄昏に瞳やさしく」などの秀作群でもしばしば描かれていますが、人類の普遍的な深層意識に訴えるものがあるんでしょうか。それともやはり単純にエロいからでしょうか。よくわかりません。エンディングのジジイとエルザのデュエットはあざといというか卑怯というか、なんとも胸キュンであり、エルザ役の子はとりたてて可愛くないものの、このエンディングにやられた人も多いことでしょう。「エルザちゃんかわいい」とどこぞの掲示板に書き込むネット廃人の姿が目に浮かぶようです。★★