去年マリエンバートで
「去年マリエンバートで(L' ANNEE DERNIERE A MARIENBAD)」(1960 仏・伊 アラン・レネ監督/アラン・ロブ=グリエ脚本)
オープニングのしつこさに爆笑。ひょろひょろうなり続ける陰鬱なオルガンが悪夢感を心地よく煽る。マネキンみたいな無表情な人物が唐突に動いたり話したりするのだが、饒舌に語られるディテールが偏執狂的なまでに無機質で冷めている一方、きわめて居心地わるい非現実的な浮遊感を伴っていて、結局どこにも着地できないという嫌がらせのような映画である。硬質な手触りの映像と話法を駆使して語られたその内容は「いつかどこかで誰かが何かをしたかもしれんがようわからんのじゃ」という感じのもので、ほとんど死人の寝言ですね(笑)。「ざくろの色」のような極彩色の紙芝居に徹していればよかったのだが、おフランスらしく中途半端に気取った感じがむかつくのでとりあえず悪口を書いておきました。ただまあ、いちおう堂々巡りの無限地獄を描こうとして上滑りした感じは出ているので、「メメント」なんてどうでもいい映画よりはよほどお薦めできます(おもしろくはありませんが)。あと、ほんのイヤガラセまでにネタバレしておくと、ぜんぶヤラセだったというのがこの映画のオチで、人を殺してはいけないという監督からの熱いメッセージがこめられています。★1/2