曖・昧・Me
「曖・昧・Me」(1990 日 佐藤闘介監督)
なぜ今ごろこの作品がDVD化されたのか本当に謎だ。しかしそれはさておき、日本製のエロい青春映画といえばコイツですな。内容はというと、自堕落なティーン小説のようなけしからんストーリーライン、「思春期のエロと憂鬱をテキトーに混ぜてみましたエヘヘ」的なあざとさがなきにしもあらずだが、微妙に死の影を宿した思春期(死蠢期)の倦怠と焦燥をはかなげな薄幸エロスに包んで描いた本作は、観る者をして打ちのめすものがある。ここに描かれているのはなんちゃって不思議少女(「害虫」)でもなく、自滅していくヒキコモリ少女(「反撥」)でもなく、現実をふてぶてしく受け入れるしたたか少女(「ロゼッタ」)でもない。不幸を不幸のまま背負って淡々と生きるポカンと口を開けた少女である。まさに裕木奈江を地で行く映画なのだ。そこへトドメを刺すのがエンディングテーマの「硝子のピノキオ」。山崎ハコ(天才)の暗い歌詞と裕木奈江のはかなげなボーカルが絶妙にマッチした、何度聴いても死にたくなる名曲だ。
Bye明日ね 子供たち遠くなる
あの子と私 ぽつんと公園
ときどき嘘をついて困らす 昔の私のように
流れ星のようなすべり台 はかなく繰り返してる
ひとりが好きと 笑ったピノキオ
そんなわけで、これは所持していることを死んでも他人に知られたくない作品のひとつである。こっそり隠れて顔から火を噴きながら観るのが正しい作法であろう。