生きものの記録
「生きものの記録」(1955 日 黒澤明監督)日本語字幕あり
世界の破滅を訴える狂人というわかりやすい戯画を通して、現代社会への警鐘を鳴らし損ねた作品。タルコフスキーが「サクリファイス」で一部借用しているとかいないとか聞いたので借りてみた。で、黒澤映画を観るのはこれで二作目だが、うーん、発想は悪くないのになんだかいまひとつ。まず物語のテンポがどうにもこうにもしんきくさい。そこへもって仰山なセリフがダラダラつづくので聞くのが面倒くさくなってしまう。登場人物が異常に多すぎて把握しきれないのも困る。それもこれも三船敏郎扮するジジイが妾とガキを作りまくったせいだが、そんな助兵衛ジジイがゲンバクごときを気にして発狂するなんて、設定として不自然すぎるのではないか。なぜブラジルにこだわるのかもさっぱりわからない。キチガイならもう少し素っ頓狂な言動で笑わせてほしいところである。しかし三船さんのあきらかにやりすぎなメイクや過剰演技はところどころ笑えるし、終盤の病院のシーンとエンディングの音楽はなかなか狂っていて良かった。序盤からこのペースで飛ばしていたら秀作コメディになったかも。似たようなテーマなら「マタンゴ」の方が優れているとは思うが。「お早よう」のあのかっこいいババアが出ていた。三好栄子たんっていうのか。惚れた。★